何処に 前編(シナリオ30)
 課題作品。テーマは宿命。
あんまり宿命っぽくないかなぁ?と思いますが、別に絶対の課題ではないのでいいでしょう。
このシナリオは実験的に取り組んだものです。どのへんが実験的なんだ?と思うかもしれませんがそれは僕のみぞ知るということで。
先生の評価を聞いて、実験は成功されたし!トラトラトラ!です。悩みまくってシナリオが分からなくなっていたので、この成功は非常に意味があるものになりました。
□内容:チャット友達と会うことになった愛。だが待ち合わせに現れたのは意外な人物だった。

□人  物

   真中愛(17)高校生

   康利(52)愛の父親

   奈々枝(47)愛の母親

   仁(22)愛の兄


〜本編〜

○駅前(雨)

   人が大勢要る。皆傘を差している。

○同・構内

   にカフェがある。ガラス張りである。

   真中愛(17)が改札から小走りで出て

   くる。

   携帯をバッグから取り出して開く。

愛「あぁ、ギリギリ」

   と、カフェを覗く。

   ガラス張りの窓を這うようにカウンタ

   ー席が並ぶ。

愛「たしか……一番端で、ハンチング帽を被

 てるって」
   と、カウンター席の一番端へと視線を

   延ばす。

   そこに、ハンチング帽を被った男(22)

   がいる。携帯電話を操作している。

愛「(驚き)……え?」

   男が携帯の操作を終えて閉じる。

   愛の携帯が震える。

   愛、それをあけてメールを見る。

   ―宛名はtoshiとあり、

   ―「もう着いてるよ。今、どこ?」と

   本文。

   愛、もう一度カウンターに座る男を見

   る。

愛「……」

   と、後ずさりしてきびすを返す。

愛「(歩きながら)嘘……」


○真中家(夜・雨)

   一軒家である。


○同・愛の自室

   6畳間ほど。パソコンが置いてある。

   その脇には電話の子機が置いてある。

   そのパソコンに向かっている愛。

   画面にはチャットメンバーの表が開い

   ている。

   その中にある「toshi」という名前にマ

   ウスポインタが合う。あとはクリック

   するだけの状態。

愛「……」

   と、マウスをクリックする指が止まる。

   愛、ため息をついてマウスから手を離す。

愛「そんなわけ……そんなわけないよ……他人

 の空似……」

   ポーンと電子音。

   愛、顔を上げる。

   画面がチャット画面に切り替わる。

toshi:今日はどうしたの?分からなかっ

 た?

   と、メッセージが表示される。

   愛、画面を見て息を呑む。

toshi:あれ?ROMかな?

   とメッセージ。

   愛、キーボードを打とうとするが躊躇っ

   て、その指を置く。

   電話の子機が二回鳴る。

愛「(子機を見て)あっ……」

   と、タイピングする。

   画面に「LOVE:ごめん、ご飯食べてく

   るから。あとで……ごめんね」と出る。

   愛、相手の反応を見ずに席を立ち部屋

   を去る。

   ドアの前で一旦止まり、少しパソコン

   に振り返る。そして電気を消して部屋

   を出る。


○同・居間

   テーブルに料理が並ぶ。

   そこに真中康利(52)が座っている。

   真中奈々枝(47)が奥の台所にいる。

   愛、席に着く。

   奈々枝「さぁ、仁の分も出来た」

   奈々枝が、ハンバーグの皿をテーブル

   に置く。

   その席は空席。

康利「……」

愛「……」

奈々枝「仁、遅いわねぇ。またゲームかし

 ら?呼んだのに……ねぇ?」

   と、愛達に同意を求めるように。

康利「母さん」

と、厳しい顔で奈々枝を見る。

奈々枝「なに?どうしたっていうの?」

康利「……愛、お前から母さんに言ってや

 れ」

愛「……」

康利「愛、同じことでもいい。言ってやるん

 だ」

愛「……あのさ……」

奈々枝「どうしたの?2人とも?」

康利「愛」

愛「……」

   と、席を立って部屋を出て行く。

康利「愛っ?どうした!?おい!」

奈々枝「なんなの?2人とも?親子喧嘩?」

康利「……」

   空席に置かれたハンバーグ。


○同・外観(夜・雨)


○同・愛の部屋(夜・雨)

   パソコンの前に居る愛。

toshi:そうか、風邪引いちゃったのか。大

 丈夫?

   と、チャット画面に出ている。

   愛、タイピングする。

LOVE:ごめんね。

   愛、手を離して画面を見つめる。

toshi:いいよ。じゃあ治ったら会えるか

 な?

愛「……」

   と、タイピングする。

LOVE:うん。

toshi:よかった。

   愛、考え込んでからタイピングする。

LOVE:話変わるけど、toshiさんの好きなもの

 って何?

   愛、じっと画面を見つめる。

toshi:ハンバーグだよ♪

   愛は画面に身を乗り出す。

愛「同じだ……」

   と、タイピングする。

LOVE:あのさ、toshiさんは兄弟とかいるの?

   愛、じっと画面を見る。

toshi:あれ?言ってなかったっけ?

LOVE:うん。

   「toshiさんがタイピング中です」と

   出る。

愛「……」

   と、息を呑む。

toshi:居ないよ

   愛、画面に顔を近づける。

愛「(つぶやく)嘘嘘、俺とは似ても似つか

 ない妹がいるよ……」

toshi:嘘嘘、俺とは似ても似つかない妹が居

 るよ。

   愛は驚いて呆然と画面を見詰める。

愛「お兄ちゃん……」

toshi:そっちは?居る?

   呆然としている愛。画面に気がつき

LOVE:うん。居る。お兄ちゃんが。

toshi:そうかぁ……お兄ちゃん好き?

   愛、タイピングする。

LOVE:……最近会ってないから。

   「toshiさんがタイピング中です」と

   出る。


○同・庭(夜・雨)

   窓の外、雨足が強い。水溜りに雨が跳

   ねて広がる。


○同・愛の部屋。

   「toshiさんがタイピング中です」と

   出ている画面。

愛「……」

   じっと画面を見ている。

toshi:会えなくても君のお兄ちゃんは君のこ

 とを思っているよ。

愛「……」

   と、タイピング。

LOVE:明日、会えないかな?

toshi:風邪?大丈夫なの?

LOVE:どうしても会いたい。

   「toshiさんがタイピング中です」と

   出る。

   愛、画面を見つめる。

愛「会って確かめたい……の」

toshi:いいよ

   愛、ほっとした表情。

   そしてタイピングする。

LOVE:じゃあ、今日と同じ場所と時間でい

 い?

toshi:うん。わかった。

LOVE:じゃあ、明日待ってるね

toshi:うん。じゃあね。

   と、絵文字でバイバイのマークが出る。

   愛は、深く息をついてキーボードから 

   手を離す。

   そして、部屋を出る。


○同・廊下

   突き当たりに部屋の戸がある。

   自室から出てきた愛。

   そのまま突き当たりの部屋に行く。

○同・仁の部屋(夜)

   暗い部屋。ベッドに机などがある。

   そこに仏壇がある。

   愛が仏壇を見つめている。

   ×  ×  ×  ×
   フラッシュ

   一番端に座るハンチング帽を被った男。

   ×  ×  ×  ×

   仏壇の写真に、その男が……真中仁が

   写っている。その写真もハンチングを

   被っている。

愛「……お兄ちゃん……本当は生きてる

 の?」


終わり
後編へ



BBS

ご感想はこちらまで


戻る
当サイトに掲載されている作品を漫画化および、映像化、舞台化その他仕事依頼などは、
下記のアドレスまでご連絡下さい。
メールアドレス paddle_life○hotmail.com
(注・@マークが抜いてありますので、ご連絡の際はお手数ですが@マークを○の部分に挿入の上ご送信ください)


Topへ