ゼッケン(シナリオ19)
とある事情で陽の目を見ることがなくなってしまった作品。僕のサイトに上げときます。
□内容:母が忙しく、姉の千津は妹のるりの面倒を見ていた。
 るりは、バスケット部で毎日を過ごし、家のことを全て千津にまかせて甘えていた。
 ある日、るりはバスケットの大会に出られることになり、試合用のゼッケンをもらう。
    

□人  物

  山田千津(17)るりの姉で、同じ高校に通う高校3年生
  山田るり(15)バスケット部に所属する高校1年生
  里中君子(15)るりと同じくバスケット部に所属する高校1年生。るりの友達
  山田智子(45)るりと千津の母親。仕事で忙しくあまり、家にいない
  先生(32)バスケ部の顧問

〜本編〜

○山田家(朝)
  山田家が見える。
  
○山田家・ダイニングキッチン
  10畳ほどの部屋。
  山田千津(17)がキッチンで洗い物をしている。
  山田智子(45)が急いでネックレスをつけている。
智子「それじゃあ、また出張で空けるけど、よろしくね千津」
千津「うん。わかったぁ」
智子「るりのご飯とか、いつものことだけどよろしくね。じゃあ、いってくる」
  と、部屋を出る。
千津「いってらっしゃ〜い」
  と、洗い物を続ける千津。
  
タイトル「ゼッケン」
  
るりの声「うああああっ」
  と、階段を降りてくる音。
  山田るり(15)が入ってくる。
るり「ねぇ!なんで起こしてくんないの!?」
千津「おはよっ。今日は学校休みだよぉ?」
るり「……練習あるっていったじゃん!」
千津「……そんなこと、言ってたぁ?」
るり「もう!使えない!」
  と、部屋を出る。
  
○同・玄関
  制服を着て、靴を履いているるり。
  その後ろから
千津「ほんとに、昨日言ったぁ?」
るり「メール、入れたのに!」
千津「ほへ?メール?」
るり「いってくる!」
  と、ドアを強く閉める。
  
○北原高校・体育館
  コートの中でバスケット部の女子が練習試合をしている。
  それを脇でみている里中君子(15)とるり。
君子「……るりッチのお姉さん、忙しくてメールなんて見ないんじゃない?」
るり「それにしてもトロすぎるよっ」
君子「私は、いい人だと思うけどなぁ……」
  ピピーっと笛の音。
先生「昼休憩〜!」
君子「おっ、昼だ。お弁当〜」
  と、バックを出す。
  るりもバックを空ける。
るり「あっ、今日お弁当持って来てないンだ」
君子「(るりのバックを見て)ん?それ、違うの?」
  るり、バックの中を見る。
  小さい包みと、水筒がある。
  それの包みを開けるるり。
  中にはおにぎりが二つ入っている。
るり「……」
君子「ホラ、やっぱりいいお姉さんジャン♪」
るり「……」
先生「(遠くから)山田〜、山田るりぃ〜」
君子「先生、呼んでるよ。るりッチっ」
るり「あっ、ハイっ」
  と、立ち上がる。
  
○山田家(雨)
  山田家が見える。
  
○同・ダイニング
  千津が急いで洗濯物を取り込んでる。
るりの声「ただいま〜」
千津「あっ」
  と、洗濯物を雑に放って部屋を出る。
  
○同・玄関
  るりが、玄関で靴を脱いでいる。
千津「ご、ごめんねぇ。メール入ってたのに気がつかなくてぇ……」
るり「ううん、いいよ。それよりさ」
  と、バックの中を探る。
るり「ド〜ン!明日の大会、急遽出られることになったんだぁ!」
  と、3と大きく書かれたゼッケンを見せる。
千津「わぁ!すごいねぇっ」
るり「先輩の代役だけどねっ」
千津「見せて見せて」
  と、ゼッケンを受け取る千津。
千津「(掲げて)これ、ちゃんとアイロンかけておくねぇ」
  と、ダイニングに向う。
るり「あと、お姉ちゃん」
千津「ん?」
るり「その……」
  バックの中から、水筒と包みが見える。
千津「ん?」
るり「……」
千津「(気付いて)あっ、洗濯物!途中だったんだ!」
  と、ダイニングへと走る。
るり「……」
  
○山田家(夜)
  山田家が見える。雨は止んでいる。
  
○同・ダイニング
  アイロン台がとアイロンが置いてある。
  その横で、洗濯物をひっくり返している千津。
千津「……どうしょ……ない」
  と、風呂上りのるりがくる。
るり「どうしたの?」
千津「あのね……ゼッケンがね……ちょっと」
るり「まさか、無いの?」
千津「ちょっと、見あたらない……の」
るり「はぁあっ!?」
千津「ご、ごめんねぇ。でも、ぜったいある……と、思うから」
るり「(洗濯物を探る)思うからって、自分でおいたんでしょぅ?ねぇ?」
千津「そ、そうなんだけど……」
るり「ありえない!全然ない!マジ、ありえない!明日、出らんないジャン!」
  と、洗濯物を投げる。
千津「……う〜ん、こうなったらやるしかないなぁ……」
るり「はぁ!?」
千津「3番……だったよね?手縫いで作ってみるぅ」
るり「……マジ、意味わかんない。そんなんじゃ絶対出れない」
千津「探すことは探すからぁ。でも、念のために……ね?」
るり「マジ、ウザイ……」
千津「ご……ごめんね」
るり「アンタ、頭わるいよ!トロいし!ウザいし!なんかムカツクんだよ!」
  と、部屋を出て行く。
千津「……ごめん……」
  と、うつむく。
  
○山田家(朝)
  山田家が見える。すずめが鳴いている。
  
○同・ダイニング(朝)
  裁縫道具が出ている。千津がソファで、寝ている。横には手縫いのゼッケン。
  るりが、部屋に入ってくる。
るり「……」
  と、テーブルを見るとラップが掛かった朝ごはんが用意してある。
るり「……」
  ×   ×   ×   ×
千津「(起きる)……ん……あっ!!」
  と、時計を見る。
千津「ああっ、寝過ごしたぁ」
  と、周りをみる。ゼッケンは無い。
千津「ゼッケン……持ってンたんだぁ……」
  と、上を見上げる。
千津「ゴメンねぇ。最低の姉で……」
  と、なにかに気がつく。
  本物のゼッケンが、電灯にぶら下がっている。
千津「あ」
  
○道
  走る千津。手にはゼッケン。
  千津、息を切らして走っている。
  と、前に君子が歩いている。
千津「あっ!君子ちゃん!?」
君子「(振り向いて)あっ!ルリっちのお姉さんっ。どうしたんですかぁ?」
千津「(ゼッケンを差し出して)こ……これ、るりに……」
君子「(受け取って)え……?あっ、わかりました!」
  と、走っていく。
千津「はぁ、はぁ……応援行かなきゃ……」
  
○大会会場・体育館内
  2階の客席にまばらに人が居る。その下にバスケットコート。試合が始まっている。
  息を切らして、客席の前まで来る千津。
千津「ま、間に合った……?」
  と、コートを見ると試合は始まっている。
るりは上にジャージを羽織ってベンチにいる。
千津「……」
君子「あっ!ルリっちのお姉さん!」
  と、近くに座っている君子。
千津「届けてくれたぁ?」
君子「うんっ!ばっちり間に合いましたぁ!」
  ピピーと笛の音。
  コートの中の選手が、るりのところへ行く。
千津「あ……」
君子「るりッチ、交替するんだ!」
  るりが、おもむろにジャージを脱ぐ。
  すると、手縫いのゼッケンをつけている。
千津「え……?」
君子「あれ……?ちゃんと渡したのに?」
千津「……」
  ピピーと、また笛が鳴る。
  るりがコートに入って、試合をはじめる。
君子「ルリっち、ファイトォー!」
  るり、必至に相手のボールを阻止している。
  揺れている、手縫いのゼッケン。
千津「……」
  ボールを奪う、るり。
  そして、ゴール向かいドリブル。
  手縫いのゼッケンが見える。
  千津、少し笑う。
  そして、息を大きく吸って。
千津「がんばれぇ!」
  と、その声に君子が驚く。
  相手に、行く手を阻まれる、るり。
千津「頑張れー!!るり〜!!!」
君子「るりッチ〜!シュートぉ!!!」
  るり、3Pシュート。
  ボールがゴールへと飛んでいく。
  ――ガシャン。
  ピピー!と、笛が鳴る。
  
○大会会場前
  大きな体育館の会場が見える。人がまばらに出て来ている。
  会場から、るりが出てくる。
  千津が、横で待っている。
千津「おめでとうっ」
るり「……うん」
  と、手縫いのゼッケンを差し出す。
千津「……」
るり「次も出れるから、それ……洗っといて」
  千津、顔を上げる。
るり「今度は無くさないでよね」
千津「(笑顔で)……うん」
るり「(振り返って)それから……ごめん」
千津「(ぽかんと驚いて)……」
  千津、笑顔になり
千津「夕飯、何にしょっか?」


終わり




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