夢の子の君(シナリオ6)
 この作品は、非常に不思議な作品で自分自信のイマジネーションを、出し惜しみせずに描いたものです。作風の転換点かと思います。
□内容:主人公の君子のもとに10年前の自分から手紙がくる。そして自分の記憶をたどりながら、今の自分と昔の自分を交錯していく。


□人  物

 原谷藤 君子(20)
 君子(10)
 帝国陸軍(猫)
 サンガリアのおじさん
 先生
 池尾
 祖父
 駅員
 監督
 脚本家
 裸エプロン
 通りすがりのサラリーマン
 その他エキストラ


〜本編〜

○君子自宅
  高級マンション。とても綺麗で広い内装。
  部屋に風呂上りで寝巻きをきた君子が頭
  をタオルで拭きながら入ってくる。
  ソファに腰を掛けて、リモコンを手に取
  りプレーヤー目掛けてスイッチを押す。
  プレーヤーから音楽がなる。
君子「ふぅ・・・」
  と、背もたれる。視界ににテーブルに雑
  然と置かれた手紙や請求書などが入る。
  その中に、少し古ぼけた封筒に気が付く。
  それに手を伸ばして、見てみる
  ――「私の夢 -10年後の今から続く10年
  後の私へ」
  と、書かれている。
君子「あっ、これ・・・」
  と、裏面を見ると「-10年後のアタシ 原
  谷藤 君子」と、書かれている。
君子「懐しいなぁ・・・」
  
○小学校・教室・君子過去
  作文用紙に「将来の夢」と題名と名前だけ
  が書かれている。
  その用紙をじっと見つめている君子。
  ほかの生徒達は黙々と書いている。
  チャイムが鳴り響く。
先生「はい、チャイムがなったので終了です
 よ。終わらなかった人はおうちに帰って宿
 題にするように」
生徒達「はぁーい!前向きに検討〜!」
先生「では、さようなら。会えたら明日会い
 ましょう」
生徒達「先生、さようなら。みなさんごきげ
 んよう!」
  帰り支度をして帰っていく生徒達。
  その中で、一人席に座って作文用紙を見
  つめる君子。じっと考え込んで見つめて
  いる。
君子「そうなの。私、この時凄い衝撃だった
 んだ。いきなり考えたこともないことを書
 けっていわれて。ただこうして漠然と作文
 の用紙を見つめていたっけ」
  
○中国茶屋マニフィスト前・君子過去
  古ぼけたお店。まるで駄菓子屋のよう。
  茶屋の前を歩いてくる君子。
君子「そうそう、ここ。帰る途中よくここで
 お茶飲みしたんだな!」
  お茶屋さんにむかって
君子「おばさん!サンガリアのおばさん!」
  中から、おじさんが出てくる。
おじさん「だから、サンガリアじゃなくて、
 マニフィストだよ。それに僕はおじさんね」
君子「どっちかっていったらそうだから、そ
 うしといたよ。とりあえずいつもの〜!」
  おじさんは、日本茶とかかれたペットボ
  トルを出して
おじさん「はい、中国茶」
君子「(受け取って)いつものってこれもの
 だったっけ?まぁいいや。はい5銭」
  と、おじさんに50円を渡す
おじさん「毎度、サンクス!」
君子「あぁ!英語!すごい!」
おじさん「簡単な英語を教えてやろうか?」
君子「道路はロード、だから英語は逆にすれ
 ばOK!だからすごいはゴイス!でしょ?」
おじさん「君ちゃん。他所では言わないほう
 がハバナイスだよ」
  
○マニフィストの裏庭・君子過去
  縁側があって、庭には物干し台。その前
  に犬小屋が設置されている。
  その庭の物干し台の土台に腰を掛けて、
  もらったお茶を湯飲みに移して飲んでい
  る君子。
君子「黄金寄り道コースで、マニフィスト茶
 屋の裏庭で、お洒落にお茶を飲んで過ごす
 のが嗜みだったなぁ」
  犬小屋の上に猫が首輪に繋がれて寝てい
  る。
君子「ここのおばさんは、おかしくて猫に首
 輪と犬小屋を与えていた。猫は猫でそれを
 承諾してそれはそれとて気に入っていたよ
 うだ」
君子「おいっ、帝国陸軍」
帝国陸軍「ねゃーす」
君子「お前、夢はあるの?寝て見るやつじゃ
 ないぞ。今日に繋がってる遠い明日のこと
 だよ」
帝国陸軍「さぁねぇ・・・アッシはただの飼
 い猫。夢も希望もありまくりだよ」
君子「なに?やっぱりタバコ屋の海援隊と結
 婚したい?」
帝国陸軍「(顔を洗いながら)あいつには・・・
 あいつには、あいつの事情と人生ってのが
 ありやす。ダンナの思うようにはなりゃし
 ませんぜ。実際」
君子「夢は叶わないの?」
帝国陸軍「(ハエにパンチをしながら)そう
 簡単にに叶わんから、夢っていうんでしょ
 うね」
君子「じゃあ、夢は簡単じゃ夢じゃないんだ?」
帝国陸軍「そうでっしゃろ?ここで、でんぐ
 り返しするのってことは夢にはならんでしょ
 うよ」
  君子は、宙を見て考える。
  そしておもむろにでんぐり返しをする。
  
○演劇場・君子過去
  布団の上ででんぐり返しをする役者さん。
  わーっと拍手が客席から起こる。
  舞台の上で演劇が行われている。
  そして、幕が閉じていく。
  君子、祖父と並んで席に座って、拍手を
  している。
祖父「いやはや・・・あの歳ででんぐり返る
 とは、まさに奇奇怪怪。奇妙奇天烈魑魅魍
 魎」
君子「ねぇ、おじいちゃぁん。知ってるよう
 で知らないおじいちゃん」
祖父「いや、君ちゃんのお爺ちゃんじゃよ。
 大いに知ってる人だよ。まぁ、知らない部
 分もあるとはおもうがの」
君子「なんで、でんぐりこむら返ると凄いの?」
祖父「別にこむらはいらないと思うけど、歳
 をとって体も弱くなっているのに、あんな
 アクロバティックなプレイは、同じ歳くら
 いの私には出来得ないからなぁ」
君子「出来ないからやってみたい?」
祖父「やってみたいではないが、純情乙女の
 ように素敵な殿方と伊太利亜の空を旋回し
 てみたいですわ!みたいな感じではあるの
 う」
君子「へぇ〜!じゃあ、おじいちゃんの夢っ
 てでんぐり返り?それともでんぐりこむら
 返し?」
祖父「別にこむらはいらないと思うけど、わ
 しの夢は君ちゃんが立派に成長して幸せに
 なることだよ」
君子「アタシが幸せになること?幸福するこ
 と?」
祖父「そう、君ちゃんが結婚して、綺麗な花
 嫁さんになって、立派なダンナにもらわれ
 て、可愛い子供を作って、ニコニコ、ニコ
 ニコ、ニーコニコしてるところが見たいん
 だよ」
君子「ふーん。それって難しい?難しいから
 夢なんでしょ?」
祖父「難しくなんてないさ。むしろ、君ちゃ
 んなら十分に幸せになれるさ。十二分じゃ
 な」
君子「難しくないのに夢なんだ。そういう夢
 もあったりするんだぁ。ふぅ〜ん。ふにゅ
 〜ん?」
  祖父、そんな君子をほほえましく見つめ
  る。
  ビーッと会場の音が響く。
祖父「ほら、第二幕上がるよ!」
  幕があがっていく。
  パチパチパチ!拍手の音。
  
○小学校・教室・君子過去
  教卓に上がって、生徒が作文を持って頭
  を下げている。
生徒「ありがとうございました。ぼくの将来
 の夢でした!敬具!」
  席にもどっていく生徒。
先生「では、次。原谷藤さん」
君子「はっ、はい!」
  と、席を立つ。
先生「ちゃんと作品は仕上げてきましたか?
 さらに品質は大丈夫ですか?」
君子「はいっ。なんとかなりました。読んで
 見るので聞いてみてください」
  君子、教卓の上に立ち、緊張の面持ちで
  作文を持って読み出す。
君子「2年乙組!原谷藤君子!私の夢 -10
 年後の今から続く10年後の私へ!」
  
○工場・事務室・君子過去
  机に座っている君子。
  そこへ係長が紙を持ってやってくる。
係長「(カメラ目線で)はじめて就職したの
 は父さんの工場。事務員としてそらまぁ、
 適当に働いていたっけ」
係長「君子ちゃん、これ。コピーしといて」
  コピー機の前にいる君子。コピー機から
  ビチョビチョの紙を取り出して乾燥台に
  置く。
  池尾、事務室に入ってくる。
池尾「(カメラ目線で)この男、初めての男
 だったけど。今考えたらそんなに悪い人じゃ
 なかったと思える」
  君子、ぼーっと乾燥台に置かれた紙を見
  つめている。紙の端が少し乾燥し始めて
  いる。
  そこに指を這わせる。
池尾「(後ろから)ねぇ、君子ちゃん。今度、
 一度お茶でも飲もうよ?ダメかな?それと
 も彼氏とかいるのかな?そのへん?」
君子「(振り向いて)え?・・・私、付き合っ
 たことないから、男の人とは」
池尾「男の人とはってのが意味深だけど。じゃ
 あ、一緒にお茶でも飲んでも大丈夫?」
君子「(笑顔で)お茶なら・・・ここでも飲
 めますよ。このへん」
池尾「意地悪だなぁ・・・」
  
○都会の街・君子過去
  賑わう都会の街。
池尾「君子は」
君子「なにが意地悪なのぉ?この帽子、嫌い
 じゃないな!」
  と、池尾の少し前を歩く君子が振り返り
  ながら甘えて言う
池尾「似合っているよ。一体、誰に買っても
 らったんだろうねぇ?そのもの」
君子「さぁねぇ?きっとあそこの人かなぁ?」
  と、適当に上の方を指す
池尾「え?そのへん・・・」
  と、その指すほうを見て、ぼーっとする。
  君子、そんな池尾を不思議に思い、指し
  た方向を見る。
  そこには、ベランダで裸エプロン姿の女
  性が布団を干している。
女性「(カメラ目線で)でも、純情乙女だっ
 た私は、この男のスケベっぷりに乙女の怒
 り爆発。科学変化および爆発」
  それをぼけーっと見つめる池尾。
  君子、自分の小さい胸を見てみる。
君子「・・・ペッタンコ・・・」
  ぼけーっとしている池尾に声を掛ける。
君子「ねぇ、池尾さん。池尾さんの夢ってな
 んですか?」
池尾「(巨乳を見ながら)そりゃぁ・・・君
 子とこれからもずっと一緒に一緒すること
 だよぉ・・・」
  君子、池尾に近づいて
君子「ねぇ、池尾さん」
池尾「(君子を見て)はい?」
君子「・・・・正直者」
  と、平手を振りかぶる。

○映画撮影所・スタジオ・君子過去
  バシっ!とカチンコが鳴る。
  ドラマが撮影されている。
女優「おお、ロミ男!どうしてあなたは、な
 んかそんなんなの!?」
俳優「じゃけん、おいどんはおいどんたい!
 ジュリエこそ、そんなにふしだらな子供に
 育てた覚えはなかとよ!」
  と、役者が演じている。
  それを遠くから座って見つめる君子。手
  にはメガホン。
君子「(メガホンをとって)はい!カットォ!!
 ショートカットォ!!撮りなおし!そこは
 『フェミニスト五郎』が言うところでしょ!」
俳優「すっ、すいません!」
君子「(メガホンを膝において)もう1回!」
  再度、役者達が演じだす。
  それを見ている君子。その膝の上のメガ
  ホン。
メガホン「急に監督になったわけじゃあない
 のよ。そら色々あったわ。あれから、工場
 をやめて、彼氏とも別れて私はあの時・・・
 そう・・・」
  
○都会の街・君子過去
  君子、都会を歩いている。
  下に何か落ちているのに気が付く。
  ――500円玉
君子「見っけ」
  と、500円玉を眺めながら歩いている。
  500円玉をふと見つめる。
君子「やっぱり、お届けしたほうがよいのか
 なぁ」
  と、振り返って来た道を戻る。
君子「うんっ、いいこと!」
  そこへ、スカウトマンが後ろから君子に
  近づいてくる。
スカウト「ねぇ、君すごいかわいいね!うち
 のオーディション受けない!受けることを
 最善と見受けるよ!」
君子「500円、落としました?」
スカウト「え?いや、落としてないけど・・・」
君子「そっかぁ。人違い」
  と、また歩き出す。
スカウト「(追いかけて)いやいや、すごい
 可愛いって!ホントに!」
君子「(振り返って)そういうこと、言われ
 たことないな。ペッタンコだし・・・」
スカウト「いや!可愛い!可愛い!可愛い!」
通りすがりのサラリーマン「(カメラ目線で)
 と、私は可愛いを32回と、別品を2回半言
 われて、その気になってそのままオーディ
 ションを受け・・・」
  
○オーディション会場・君子過去
  長机に、プロデューサーやら監督、脚本
  家が並んで座っている。
  君子、台本を手に演技をしている。
君子「じゃけん、おいどんはおいどんたい!
 ジュリエこそ!うぅ!体が!フェミニスト
 に!フェミニスト五郎に!」
監督「あっ!あぁ。ちょっといいかな?」
  と、君子の演技を止める。
君子「はい、なんでしょうか?フェミニスト
 さん」
監督「いや、僕は監督だよ。フェミニストで
 はないよ。いやね。その、その台本は君が
 書いたの?」
君子「ええ、無いと演技とか出来ないかなと
 思いまして」
脚本家「・・・な、なんという才能だ!才覚
 が能力として成り立っている!」
監督「き、君ぃ!」
  と、驚きの表情で立ち上がる。
  
○舞台劇場・君子過去
  客が一斉に立ち上がる。
  スタンディングオベーションの嵐。
  幕が開いて、キャストやスタッフが出て
  くる。
  その中心には君子の姿。その横にはマイ
  クを持った司会がいる。
司会「それでは、脚本監督を務めさらには、
 主演もしました原谷藤君子さんです!!」
君子「(向けられたマイクに)どうも、女監
 督です!監督なのにじょかんとくって呼ば
 れてます!不愉快ではないのですが、不正
 解ではあるなと思ってます」
  客席からは笑い声がドッとわく。
  カメラマン達が、君子の前に出てくる。
カメラマン「はい!監督!こっち!こっち!
 三時の方向!」
  ニコリと笑う君子。
  その笑顔に
  
○君子自宅・現在
  パシャっと、封筒をペーパーナイフで切
  る君子。
  その中から、二つに折られた紙を取り出
  す。
  そこには――「校庭の一番大きな木の根
  っこのお隣に本編を埋めときました」
  と、ある。
  ×   ×   ×   ×
  プルルルル(電話のコール音)
  電話をしている君子。
  ガチャ(電話を取る音)
君子「あっ、岡さん?私、君子。うん、元気
 よ。えぇ?やめてよ、恥ずかしいなぁ。そ
 れでさぁ、小学校ってまだある?私達がいっ
 ていた小学校。え?区画整理で取り壊され
 た?中学校が?へー。で?小学校は?・・・
 先生が盗撮で捕まったの。へー、じゃあま
 だあるのね?」
  電話の受話器を置く君子の手
  
○改札・現在
  ガチャ――改札が開く。
  
○電車(夜)・現在
  内装はボックス席が中心の車両。客の数
  はまばら
  君子、ボックス席に座っている。その向
  かいにおっさんが一人座って寝ている。
  窓からボーっと外を眺める君子。
君子N「私は、他人に何してるの?と聞かれ
 ると、とても困るような行動に出ていた。
 スケジュールを大幅に早めて、あの-10年
 後の私の手紙を読んでみたいと思っている。
 夢について書いたのはわかるのだけど、内
 容が記憶にない。」
  と、君子外を眺めながら考える。そして
  前に座っているおっさんに向かって
君子「でも、-10年後のアタシはわからなく
 なっていたと思う。一体、どうやって夢を
 綴ったのかなぁ?天動説ぅ」
  
○マニフィスト裏庭・君子過去
  物干し台の土台に座って、画板を首から
  かけ、その上に作文用紙を置いて、鉛筆
  を動かす君子。
  その前には猫が犬小屋に入って寝ている。
君子「ねぇ、天動説ぅ?アタシ、とっても迷っ
 てる。難しいのが夢って言ったけど、簡単
 なのも夢となるって聞いたのよ?一体、10
 年後の私はどうなりたいのかなぁ?思考に
 迷っちゃった」
帝国陸軍「いつから、アッシの名前は天動説に
 なったんで?」
君子「ねぇ?迷ったときはどうすればいい?
 天動説ぅ?」
帝国陸軍「アンさん、ほんと信念の人だね。
 それで、アンさんは10年後、どんなんにな
 りたいんで?そこを考えてごらんなましよ」
君子「わかんない」
帝国陸軍「じゃあ、地図でも、そこへ行くた
 めの地図でも・・・」
  
○駅前(夜)・現在
駅前「地図を見るといいですよ。今、持って
 いたしましょう」
君子「すいません、なんかもう土地勘なくなっ
 てて・・・」
駅員「このへんはずいぶんと変わりましたか
 らね。ほら、こんな時間に塾帰りの子供ら
 しきものがいる」
  と、言われて君子、駅員のいうほうをみ
  ると、おじいちゃんがぶつぶつ独り言を
  言いながら歩いている。
君子「私、塾なんていかなかったなぁ」
  駅員、胸元から地図を取り出して
駅員「はい、これ地図。あげますよ、洗って
 返されても困っちゃうし」
君子「ありがとうございます。サインくらい
 つけて返しますよ」
  と、笑顔であるいて遠くなる。
駅員「やっぱり・・・本物のジョルジョアン
 ナさんだぁ・・・」
  
○住宅街(夜)・現在
  少ない街頭に照らされた住宅街を、二つ
  折りにした地図を見ながら歩く君子。
君子「そう・・・地図だ・・・迷った時には」
  と、地図を広げる。
  
○君子自宅・祖父の部屋・君子の過去
  祖父が部屋で、スタイリーをやっている。
  そこへ、君子入ってくる。
君子「おじいちゃん。スタイリーしているお
 じいちゃん」
祖父「おお、君ちゃんか」
  君子、祖父が乗っているスタイリーを腕
  でさらに激しく動かして
君子「ねぇ、アタシの将来までの地図って持っ
 てない?持っているなら隠さないほうが身
 のため」
祖父「なんだい?君ちゃん。将来がわからな
 いのかい?」
  と、高速スタイリーされながらいう。
君子「うん。持ってる?隠し持ってる?」
祖父「いや、そんなものは隠し持ってないよ。
 と、いうより世の中に出回ってもいない」
君子「存在しない物体?ファンタジー?」
祖父「そうじゃなぁ・・・自分で作ってみた
 らどうじゃ?将来どういう風に生きるのか、
 地図を書いてみるんじゃよ」
  君子、その言葉に笑顔になる。
君子「なーる!」
  と、いって部屋を飛び出る。
  祖父、高速スタイリーのまま放っておか
  れる。
  
○君子自宅・自室・君子の過去
  バッと自分の部屋のカーペットの上に白
  い紙を広げる。
君子「-10年後から10年後に続く地図を作れ
 ば、夢がわかる!」
  と、ペンのキャップをポコンとはずす。
君子「ここが、現在地『今』」
  と、地図に☆マークを書く。
君子「そしてこの当たりが目的地『10年後』」
  と、地図に十のマークを書く。
君子「そして『今』から『10年後』に出発!」
  と、ペンを現在地の位置に置く。
君子「まずは・・・」
  
○住宅街(夜)・現在
君子「(真顔で)右」
  と、右の道へ曲がる。
君子「その次は、しばらく・・・」
  
○君子・自宅自室・君子の過去
君子「まっすぐ!」
  と、ぎゅーっとペンで道を引く。
  君子、その線を途中で止めて、宙を見つ
  めて考える。
君子「ここの先の突き当たりで素敵な男の人
 が自転車をくれるの!」
  と、自転車の絵を書き込む。
君子「そして・・・」
  
○住宅街(夜)・現在
君子「(少し笑顔)ここを左っ」
  と、自転車に乗ってT字路を左に曲がる。
  T字路には池尾が一人立っている。
君子「そして、次は・・・」
  
○君子・自宅自室・君子の過去
君子「坂道!!」
  と、ペンでギューッと線を引っ張る。と、
  その手を止めて。
君子「・・・う〜ん。のぼりは自転車だとキ
 ツイから・・・」
  
○住宅街(夜)・現在
君子「(笑顔)下り坂!」
  ひゅーんと下ると、昔であったスカウト
  マンや監督、脚本家が通り過ぎる。
  そのまま、下にもぐるようにジェットコー
  スターのように一回転する。
君子「この次はぁー!!」
  
○君子・自宅自室・君子の過去
君子「上り坂ー!」
  ペンを楽しそうに斜め上に伸ばして、そ
  のまま紙を飛び出してカーペットにも線
  を延ばして、線を引きながら壁を伝って
  窓から出て行く。
君子「ぎゅーん!!」
  
○住宅街(夜)・現在
君子「(満面の笑み)ここでカーブ!」
  ヒューンと大きくカーブしていく自転車。
  カーブはそのまま円を描くように螺旋に
  なる。
  クルクルとその螺旋を下がっていく。
  そして、真っ直ぐな道になりその速度の
  まま、走り抜けていく。君子が通り過ぎ
  ると、真っ暗な道に街頭がドンドン灯っ
  ていく。
君子「そして・・・」
  
○フラッシュ
  昔の君子の笑顔
君子「終点!」
  
○学校・校門前(夜)・現在
  キッと、ブレーキをして校門の前に止ま
  る君子。校門は開いている。
  息を切らしながら学校を見上げる。
君子「・・・・ここだ・・・」
  と、いって自転車を置いて中に入る。
  
○同・校庭(夜)・現在
  校庭の真ん中あたりまで歩いてきている
  君子。
君子「(キョロキョロ)大きい木なんてあっ
 たかなぁ・・・」
  広い校庭、薄暗い。目立って大きい木は
  無い。
  君子、なにかを発見する。
君子「あっ・・・」
  
○ 同・木の前・現在
  2メートルほどの木が立っている。
君子「(見上げて)大きく見えたんだなぁ・・・」
昔の君子「背、伸びるんだね」
  と、昔の君子が木の横から顔を出す。
今の君子「久しぶり」
昔の君子「はじめまして」
今の君子「・・・どう?+10年後の私は?」
昔の君子「綺麗。すごい綺麗」
今の君子「あはっ、ありがとう」
昔の君子「うんっ、ありがとう」
今の君子「・・・夢。-10年後のアタシはな
 んだったの?」
昔の君子「うん。ずいぶんと迷ったんだけど、
 ちゃんと決めたんだよ」
今の君子「教えて」
昔の君子「アタシね。あなたになりたい」
今の君子「え・・・?」
昔の君子「アタシの夢はね。10年後の私にな
 ることだよ」
今の君子「・・・女優で監督になりたかった
 の?」
昔の君子「ううん。違うよ。10年後の私にな
 りたかったの」
今の君子「まぁ・・・楽しいけどね。それな
 りに」
昔の君子「うん。夢はね難しかったり、簡単
 であったり、でも叶わないのは嫌だったし、
 簡単なのも嫌だった。だから難しくっても
 叶うこと。10年後の私になるってことだよ」
今の君子「そうね・・・そりゃ叶うわね。そ
 りゃ・・・」
昔の君子「うん!生きてくれてありがとう!」
今の君子「・・・・」
昔の君子「10年間、アタシに明日を+してく
 れてありがとう。アタシの夢叶えてくれて!」
今の君子「・・・・・」
昔の君子「だから10年後の私は、もう10年後
 の私に夢をもってね。きっと叶う難しい夢
 だけど」
今の君子「・・・・そうね。また+10年分の
 明日を繋げていこうね」
昔の君子「うん。また、会おうね」
  スッと消える昔の君子。
  ×  ×  ×  ×
  木の側を掘り返して、カンの箱から手紙
  を取り出して読んでいる君子。
君子「・・・・うん。いつでもね」
  カンの中に、フェルトペンが一本入って
  いる。


終わり


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