透明花(シナリオ23)
 課題で描いたもの。「湖」というものをテーマとして描きました。湖に因縁とドラマ性を出したいなぁと思ったン
ですけど、ちょっと辛辣になりすぎたかなと思います。200行の中にぶちこむのでゼェゼェしちゃいました。
評価は、もっと湖を主として使うこと、浩二の葛藤が切なくてドラマチックとのことでした。
□内容:妹を助けることが出来なかった主人公の浩二。彼は自己嫌悪に陥り自殺を決意する。

□人  物

 相澤浩二(18)無職
 相澤浩美(17)高校生
 相澤直子(45)主婦
 相澤浩道(50)会社員
 土田良三(32)会社員
 

〜本編〜

○×○湖・全景
   大きな湖。

○渡せ橋
   渡せ橋がある。
   渡せ橋の先にいる相澤浩二(18)その
   目の前で溺れている相澤浩美(17)
浩美「お兄ちゃんっ!お兄ちゃんっ!」
   と、苦しそうに溺れる。
   浩二、戸惑いの表情で浩美を見る。
   浩二の車椅子。
   車椅子のタイヤを握る浩二。
   浩美、溺れてもがいている。
   浩二、目を閉じて震える。
浩美「お兄ちゃんっ!助けてっ!」

○相澤家・全景(夕)
   一軒家である。

○同・リビング(夕)
   一般的なリビング。テーブル、TV、
   ソファ、タンスがある。
   タンスの上には、浩美が写っている写
   真盾が数点。入学した時の写真などが
   その中のある仲良く写る浩二と浩美の
   写真手に取って見ている浩二
浩二「……」
   相澤直子(45)のすすり泣く声が聞こ
   えてくる。
   浩二、横の和室を覘く。

○同・和室
   仏壇がある。その前に座り泣いている。
   側には相澤浩道(50)が座る。
   浩美の遺影写真。
浩二「……ごめん」
   直子、振り向いて
直子「なんで浩美を助けなかったのよっ!?
 なんでほっといたのよっ!」
   浩二、驚いた表情。
   浩道、直子を制止して
浩道「浩二、少し部屋に居ろ」
直子「なんでよっ!」
   と、錯乱気味に叫ぶ直子。
浩二「……」
   と、悲しく項垂れる。

○同・浩二の部屋
   本棚、ベッドがある。
   部屋に入り、ドアを閉める浩二。電気
   は点けない。
   もってきた浩美の写真たてを本棚に置
   く。
浩二「……」
   と、涙を荒く拭う。
浩道の声「浩二……」

○同・ドア前
   浩道がドアに向って立っている。

○同・浩二の部屋
   浩二、じっと聞いている。
浩道「母さん……混乱してるだけだからな。
 さっきの本気に取るな」
浩二「……さんも思ってるんだろ。同じこと」
浩道「事故で不自由なお前に、なんとかでき
 た状況じゃない。責任に思うな」
浩二「そうだよ。俺の脚は動かないよ。だか
 らちゃんと動く浩美のほうが大事だよね」
浩道「なに言ってる」
   浩美の写真たてが見える。
浩二の声「あいつは頭もよかったし。部活だ
 って頑張ってた。将来も明るかったよ……。
 俺とは正反対だよな。そりゃ大事さ」
   浩道、辛辣な表情。
浩二「父さんも思ってるんだろ……。俺が死
 ねばよかったんだって」

○同・ドア前
   浩道、驚きの表情。
浩道「!」
   と、ドアを開けようとする。
   が、カギが掛かって開かない。
浩道「浩二っ!そんな風に考えるのは……」
浩二「うるせぇっ!」
   と、ドアに何かがぶつかった衝撃と音。
   さらに、室内で滅茶苦茶に暴れている
   浩二。
浩道「……」
   と、頭を抱えてその場を去る。

○同・浩二の部屋
   滅茶苦茶の部屋。
   息を切らしている浩二。
   浩二の視界に写真たてが入る。
   浩二、キレてそれを吹っ飛ばす。
   その作用で車椅子から落ちる浩二。
浩二「……う」
   と、目の前に、吹っ飛ばされ割れた写
   真たて。
   仲良く写る浩二と浩美の写真。
浩二「うっ……ううっ……」
   と、すすり泣く。
浩二「……俺が死ねばいいんだ……。俺が死
 ねっ!俺が死ねっ!」
   と、叫んで泣く。

○×○湖(朝)
   T「――翌日」
   湖沿いを行く浩二の姿。
   やつれた表情の浩二。
   ジョギングをする土田良三(32)が、
   通り過ぎる。

○同・渡し橋
   渡し橋を見つめる。
浩二「……」
   車椅子の車輪を持つ。
   渡し橋の先端にいく浩二。
浩二「……死のう」
   と、肘掛に手をついて身を乗り出す。
   だが、手が震える。
   浩二、その手を見て恐怖に息が上がる。
浩二「死ぬんだ……帰ってどうなる。生きて
 いても明日からどうすンだ……死ぬんだ。
 俺は死ぬんだっ」
   再度、身を乗り出す。
浩二「〜〜っ」
   恐怖に顔が歪む。
   目を瞑る。
   車椅子が、倒れる。
浩二「うっうう〜っ」
   橋先に服が引っかかって落ちていない。
浩二「うう……」
   その服を取ろうと手を伸ばす。取って
   しまえば直ぐに取れそう。
   浩二、手を伸ばすもためらう。
浩二「……」
   ジョギングしている土田が目に入る。
浩二「死ぬんだ……俺は……俺……」
   引っかかった服に手を伸ばす。
浩二「…………」
   悲痛の表情で、その手を見つめる。
   服に手が掛かる。
   浩二、目をつぶる。
土田の声「おいっ!」
   土田が、走って浩二に近づいてくる。
   引き上げられる浩二。
   土田、浩二を抱きかかえて
土田「大丈夫かっ!?」
   浩二、目を開ける。
浩二「……」
   と、呆けて火が点いたように泣く。
浩二「死にたくないっ……死にたくないっ」

○相澤家・全景
   玄関が開いている。浩道が浩二を家に
   入れている。門の前で土田に頭を下げ
   ている直子。

○同・リビング
   浩道、浩二をソファに座らせる。直子
   が部屋に入ってくる。
浩道「……もっと気をつけろ。落ちてたら大
 変なことになってたぞ」
浩二「……」
   直子が、浩二の前に来る。
直子「……足擦りむいてるわ」
   と、浩二の擦りむいた膝。
浩二「……大丈夫」
直子「ダメよ」
   と、タンスの上にある薬箱を取る。
浩道「ちゃんと消毒してもらえよ」
   と、椅子に座ってTVのスイッチをつ
   ける。
   直子、傷の手当てをする。
直子「「一人で湖に行かないのよ」
浩二「……」
   と、唐突に浩二に抱きつく直子。
浩二「母さん……?」
   直子、涙を流す。
   その涙が、浩二の頬に触れる。
   ハッとする浩二。
浩二「……」
   直子、涙を拭きながら離れる。
直子「さて、晩御飯何がいい?」
   と、笑顔を作ってキッチンへと行く。
浩二「……」
   と、複雑な表情。
直子「焼肉とかしちゃおうか?ねっ」
浩道「そうだな。そうしょう」
浩二「……」
   浩美の写真を見る浩二。
浩道「おっ、イチロー今年も200本か」
浩二「……ねぇ、お母さん。お父さん」
直子「なに?」
浩二「ごめんなさい」
直子「……」
   と、少し伏目になる。
浩二「俺……生きるから」
直子・浩道「……」
浩二「だって生きているから」
   涙を浮かばせる直子と浩道。
   浩美の遺影写真。笑顔で写っている。






終わり



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