チーフ(シナリオ22)
 課題で描いたもの。感情で押すということを実践した作品です。主人公の感情を主体として描きました。
課題のテーマは「回想・秘密」
□内容:ファーストフード店でチーフをやっている花実。花実は過度なまでに仕事に厳しかった。それには
人には言えない過去が関係していたのだ。

□人  物

 安藤花実(はなみ)(29)マクドウのチーフ
          (27)
 保田未樹(22)新入社員。レジ担当
 田所武志(24)社員。厨房担当
 田中加奈美(21)新入社員。レジ担当
 社員A
 バイトA
 バイトB
 店長

〜本編〜

○マクドウ・全景
   看板に「マクドウ」と書かれているフ
   ァーストフード店が見える。

○同・店内
   一般的なファーストフード店。
   レジに客が並ぶほど混んでいる。
   安藤花実(29)がレジをしている。
花実「ありがとうございます。ご一緒にポテ
 トはいかがですか?」
   と、スマイル。

○同・厨房
   少し狭い厨房。レジとは繋がっていな
   い。数人の社員とバイトが忙しく働い
   ている。田所武志(24)もいる。
   花実、レジから顔を出して
花実「25のオーダー!どうなってるっ!」
   田所、ポテトを上げながら
田所「すいやせんっ。今!」
   と、花実、置かれたコーヒーを見る。
花実「ほら、誰か!テイクのコーヒー!早く
 持っていけよっ!」
   と、レジの方から保田未樹(22)が走
   ってくる。
未樹「はいっ!わたしが!」
花実「遅いっ!お客様が帰ってしまうだろっ!」
   未樹、コーヒー持つ。
未樹「熱っ!」
   と、下に落とす。
花実「ほらほら、待ってくれないっていって
 るだろうがっ!どうすんだよっ!ほらっ!」
未樹「すみません、煎れ直します!」
   と、コーヒーを煎れにいこうと機械に
   向う花実、こぼしたコーヒーを足で踏
   みつけて。
花実「このままかよ!これであたしとか、他
 の戦力になる人間がすべって転んで、仕事
 が停まったら誰が迷惑するんだよっ!」
未樹「あっ!すいません!」
   と、近くにあるモップを取る。
花実「モップは、あとだろうが!コーヒーが
 先!テイクで待ってるお客様には関係ない!」
   と、未樹の肩を押し飛ばす。
未樹「はいっ!」
   と、戻る。
   花実、厨房を見渡す。
   その様子を見ている田所。
田所「……」

○マクドウ・全景(夜)
   マクドウの照明が落ちる。

○同・厨房
   誰もいない厨房。
   モップで床を拭く未樹。
   花実が来る。
   未樹、手を止めて
未樹「お疲れ様です」
花実「……なにしてんの?」
未樹「えっ……あの、お昼にこぼしちゃった
 コーヒーをモップで拭いてて……」
花実「あーあー。そうじゃないって。それが
 掃除?ってこと」
未樹「え、あっ……」
   花実、足で拭いた跡を撫でる。水が溜
   まっている。
花実「これじゃあ、よけい転び安いンだけど?」
未樹「あ、あの……」
花実「はぁ?」
未樹「す、すみません」
花実「あんたさぁ、社員なんだらさ。意識し
 てよね。今月、クレーム何件頂いたの?」
未樹「……」
花実「7件だよね」
未樹「……6件です」
花実「ごめん。間違えちゃった。多すぎて」
未樹「……すみません」
花実「お客様に新人とか、ベテランとか関係
 ないの。ミスはミスなのよ。理解してる?」
未樹「……」
花実「すみません」
未樹「あっ……」
花実「謝る暇あるんだったら、少しは頭働か
 せてよ。謝罪ちゃん」
   と、厨房を出て行く。
未樹「……」

○路地
   暗い路地。一人で歩いている花実。
   そこに田所が待っている。
   花実、気がつく。
花実「なに?」
田所「未樹……いや、保田さん。辞めたいっ
 て言ってましたよ」
花実「……」
   と、田所の前を通っていく。
田所「いじめですか?」
花実「……」
田所「そうやっていじめて楽しいですか?」
花実「会社に好きだの嫌いだの持ち込まない
 でくれる?意味ないし、関係ないわ」
田所「そっ、そんなんじゃ!」
花実「本人に伝えておいて」
田所「え?」
花実「(振り返り)辞めていいって」
   と、歩いていく。
   田所、怒りの表情。
田所「……いじめて楽しいかよっ!」
   と、地団駄。
   花実、無表情で歩いていく。
花実N「いじめじゃないわ」

○回想・マクドウ店内
   人で賑わっている。
   花実(27)と、社員Aがレジの角で、
   田中加奈美(21)を見ている。
   加奈美がお盆にコーヒーを載せて、危
   なげに歩いている。
社員A「結構、若いのはそういってますよ」
花実「勘違いよ。幼稚な発想だわ」
社員A「ま、いいですけどね」
   と、仕事に戻る。
   フラフラ歩いている加奈美。
   花実、加奈美へと歩き出すが、足を止
   める。
花実「……勘違いされるだけ……か」
   と、きびすを返して歩き出す。
   ガシャンと音。
客「あちぃ〜!!!」
加奈美「すみませんっ!」
   花実、振り返る。
   コーヒーをかけられた客がうめいてい
   る。横で頭を下げている加奈美。
   花実、走る。

○回想 同・厨房
   社員、バイト一同が並んでいる。前に
   店長と花実がいる。
店長「大変、申し訳ありませんが、全員減俸
 処分となりました。詳しいことが分かり次
 第、またご連絡いたします」
   一同から、ため息。
加奈美「すみません……」
   と、小さい声で言う。
   花実、その様子を見ている。

○回想 同・厨房
   忙しく働く一同。
   花実、それを見つめている。
   加奈美が、入ってくる。
加奈美「あの。オーダーです」
   と、オーダー票を張る。
バイトA「ちょっ、邪魔だよ」
   と、体で押される。
   加奈美、ヨロヨロして他のバイトBに
   ぶつかる。
バイトB「うんだよっ!うぜぇんだよ!」
加奈美「ご、ごめんなさい……」
花実「……いいから、レジに戻りなさい」
   加奈美、半泣きで戻ろうとする。
バイトB「マジつかえねぇよアイツ」
   加奈美、一瞬動きを止めてから走り出
   す。
花実「……」

○回想 レジ(夜)
   薄暗い店内。
   店長と花実が話している。
花実「……自殺?」
店長「……あぁ、そうみたいだ」
花実「……そうですか……。私の……責任で
 す」

○花実の部屋・リビング(朝)
   TVとちゃぶ台がある普通の部屋。ちゃ
   ぶ台の上には朝食がある。
   花実が、朝食を見つめて考え込んでい
   る。
花実「……いじめ……そう思われても、言わ
 なくちゃダメなのよ」
TVの声「……で、自殺したと思われる遺体が
 見つかりました。自殺されたかと思われる
 人物は……」
   と、花実顔を上げてTVを見る。
   TV画面に、未樹の顔写真が映る。
TV「被害者の保田さんは、遺書によると、上
 司からのいじめを苦に自殺したと思われ…
 …」
   呆然とする花実。
   朝食をTVに投げつける。







終わり



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