正義(シナリオ33)
□内容:体育館、そこでバスケットボールを見つめる一人の女性。そして彼女を追ってきた男。女はそっと口を開く「あなたはいつも正しかった」と。

人  物

紺野(28)男性
涼子(27)女性

その他

○藤崎高校・体育館
 時計が備え付けられている。バスケットコ
 ートと、ゴールがある。
 そこで紺野涼子(27)がバスケットボール
 を手に立っている。
 体育館の入口には息を切らしたスーツ姿
 の紺野忠志(28)イヤホンを している。
涼子「(紺野に)あなたはいつも正しかった。
 あの日もそうだった……」
紺野「(涼子を見つめ)……」
 と、耳からイヤホンを取る。
涼子「ラスト三十秒だった。点差は二点。私
 がスリーポイントシュートを一本決めれば
 逆転できた……」
紺野「あの時の……高校の時のことか……」
涼子「でも、あなたはあの時……観客席から、
 なんて言ったか覚えてる?」
紺野「……スリーは打つな。手堅く普通にシ
 ュートして同点を狙え」
 涼子は、その場でボールを一つつく。
涼子「結果、私はスリーを打った……。あな
 たが正しかった……」
紺野「(うつむく)……」
涼子「でも、同点よ。あなたの言う通りやっ
 たって、同点だったのよ」
紺野「同点なら延長になったさ。やり直しが
 できたンだ。今のお前だって……」
 涼子、悲しげに鼻で笑う。
涼子「どうして、そうやって正しいの?なん
 でいつもそう正しいことを言うの?」
紺野「君の……君の為だよ……」
 涼子、悲しげな表情で紺野を見つめ、
 うつむく。目には涙が溜まっている。
 涼子、顔を上げて
涼子「(厳しい表情で)正しいことだって、
 正しくない時があるわ」
 時計を見る涼子。
 秒針が12時まで来る。
涼子「そこに立って」
 と、自分の前を指差す。
紺野「……?」
 と、そこに立つ。
 涼子は、その場でボールをつき、紺
 野に向ってドリブルしてくる。
紺野「おっ、おいっ!」
涼子「それを証明してあげる」
紺野「!」
 と、腰を落として手を広げる。
 涼子は紺野の前で立ち止まり、スリ
 ーポイントシュートを打つ体勢。
 紺野は、手を伸ばしてそのシュート
 コースを塞ぐ。
 涼子、別のコースを探すが紺野の手
 に阻まれる。
 涼子は、ドルブルして横に移動。
 それに追いつく紺野。
 涼子、シュートを打とうにも紺野の
 ディフェンスで打てない。
 涼子、時計をチラリと見る。
 時計の秒針は6時の近くに来ている。
 つまり30秒経とうとしている。
涼子「くっ!」
 と、その場でスリーポイントシュー
 トを打つ。
 放物線を描いてゴールへと向ってい
 くボール。
 それを見つめる涼子。
 見つめる紺野。
 ボールはゴールにぶつかり外れる。
涼子「!」
 ボールは跳ねながら転がっていく。
 紺野、息を切らせながら涼子を見る。
 涼子、息を切らせボールを見つめる。
紺野「……さぁ、もう行こう」
 と、涼子に手を差し伸べる。
涼子「正しいこと……」
 紺野、悲しげに涼子を見つめる。
涼子「もう十年も一緒に居るのよ!あたし
 達!ずっと居たじゃない!正しいことだって!」
紺野「(悲しげに)……」
涼子「あたし達にとっては……」
 と、泣きながら紺野の胸を叩く。
紺野「……大丈夫。ずっと居てやるさ。戻っ
 てきたら、また……やり直せる。大丈夫
 だから……俺たちは夫婦じゃないか」
 と、涼子を抱きしめる。
 涼子、声を上げて泣き出す。
無線の声「紺野巡査部長。マル被は居たか?」
紺野「(悲しげに)マル被、確保……」
 さらに鳴き声をあげる涼子。
 抱きしめる紺野。
TV中継の記者の声「今日、午前十一時頃、
 逃走中の容疑者が逮捕されました。容疑
 者は紺野涼子二十七歳。取調べで紺野容
 疑者は被害者と口論の末、突き飛ばし誤
 って階段から転落させてしまったと供述し
 ており殺す気はなかったと……」

終わり


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