ウェディングビームス(シナリオ27)
 課題作品。当初は時代劇で描こうと思っていた作品。つまらないのでファンタジーモノに変更。それが巧したか、かなりの高評価を頂きました。「葛藤と対立」を最重要点とし、さらに「テーマ」と「転」に意識を置いて描いた作品です。
□内容:レヴァンという異世界の王国。レヴァン軍人のタハ・ツバメはウェディングドレスを着て式に控えていた。そこに入った味 方からの救援連絡。ツバメは味方を助けに行こうと式場を抜け出す。だが、その前に兄のサダノブが立ちはだかる。剣を持って。。

□人  物

 タハ・ツバメ(20) レヴァン軍空士・中尉
 タハ・サダノブ(27)タハ製鉄社長
 スハラ・タツ(19) レヴァン軍空士・伍長
 兵士A レヴァン軍一等空士



〜本編〜

○レヴァン国境付近上空
   T「レヴァン国境付近・上空」
   全長3mほどの単座式ステルス戦闘機の
   上に立って乗る。それが10機ほど空を
   飛んでいる。手には剣。剣の切っ先か
   らビームを発射し、不気味で巨大な空
   飛ぶ化け物と戦っている。
   スハラ・タツ(19)も同じく戦ってい
   る。
スハラ「俺が中尉を呼んでくる!それまでも
 たせろ!」
兵士A「ですが、スハラ伍長!中尉は!」
スハラ「いいから!」
   と、一人戦線から離脱していく。

○結婚式場
   チャペルが見える。

○同・控え室
   鏡台がある。その上に、携帯電話。
   壁に立てかけられた剣が見える。。
   その鏡を見つめるタハ・ツバメ(20)
   ウェディングドレス姿。
   背後に立っているタハ・サダノブ(27)
サダノブ「これで、タハ家も安定するね」
ツバメ「そうね……サダノブ兄さん」
   と、携帯が震える。
   ツバメ、携帯に出る。
ツバメ「なに?……来たのね。奴等……。わ
 かった。ポイント787に迎えに来て」
   と、携帯を切る。
サダノブ「ツバメ、君が行く必要はないよ」
   ツバメ、無言で壁の剣を取る。
ツバメ「本体が遠征中なんです。今、国境を
 奴等に突破されるわけにはいきません。」
   と、部屋を出ようとする。
   ツバメの手を掴むサダノブ。
サダノブ「この結婚、どういうものか理解し
 ているのかい?ツバメ」
ツバメ「兄さん。今はそれどころじゃないの。
 この国をわけわかんない奴等が攻めてきて
 るの。戦わなければならないのよっ!」
   と、手を振り解いて部屋を出る。
サダノブ「……」
   と、表情が鋭くなる。

○同・玄関
   玄関から走って出てくるツバメ。
   ツバメ、空を見上げる。
   スハラの乗るステルス機が下りてくる。
ツバメ「今回は迷わずこれたみたいね」
スハラ「うおっ!中尉ってばすげぇ格好」
ツバメ「戦闘服よ。ある意味」
   と、ステルス機へと行く。
   と、その足許に突然のビームが飛んで
   くる。
サダノブの声「本当に行くのかい?ツバメ」
   その声にツバメ、振り返る。
   サダノブ、剣の切っ先をツバメにむけ
   ている。
ツバメ「兄さん……」
サダノブ「僕だって、伊達に徴兵されたわけ
 じゃない……力ずくでも止めるよ」」
ツバメ「……」
   その背後に轟音と共に降りてくるステ
   ルス機。
スハラ「(顔を出し)な、なんだぁ?」
ツバメ「兄さん……やめてください」
サダノブ「母さんも待ってる。戻るんだ。タ
 ハ家を終わらせる気なのかい?」
ツバメ「こんなことで終わるタハ家ではない
 はずです」
サダノブ「終わるよ。僕等タハ製鉄は父さん
 が残した負債で大きく傾いている。生き残
 るには、この結婚で得られるルア貴族との
 パイプがどうしても必要なんだよ」
ツバメ「家を守れても国が無くなってしまえ
 ば無意味です」
サダノブ「君はもうすぐ退役する。すなわち、
 タハ家の女として生きる。女は家を守って
 いればいいんだよ。他は考えなくていい」
ツバメ「……まだ軍人です。それに……」
サダノブ「君は、家の命と他人の命どちらを
 取るんだ?」
ツバメ「……それは極論です。今はもっと大
 事なことがあると言っているンです」
サダノブ「そうか、君は他人を取るのか。ど
 うでもいい他人を」
   と、剣をツバメに向ける。
   そして、切っ先からビームを発射する。
   剣で受け、防御するツバメ。
スハラ「うおおっ!?兄弟ゲンカ!?」
サダノブ「他人などなにもしてくれはしない!
 家を重んじるんだ!ツバメ!」
ツバメ「別に、結婚をしないといっているわ
 けではありません!ただ!」
サダノブ「世間知らずだね。君は。こんなこ
 とが知れれば破談だよ!」
ツバメ「……人を助けにいって、それで破談
 ならそんなところへ嫁ぎたくありません!」
サダノブ「君の意思など関係はないよ!」
   と、またツバメに剣を向けてビームを
   打つ。
   避けるツバメ。
ツバメ「兄さんっ!」
スハラ「(見ている)おいおい……なんなん
 だよぉ……」
   と、手元のパネルが開いて、通信画面。
通信の声「おいっ!スハラ!スハラ伍長!」

○国境付近・上空
   ステルス機の上に乗った兵士達5機ほど、
   不気味な化け物達と戦っている。
兵士A「もうもたねぇよ!一匹、伍長を追っ
 ていっちまったしよぉ!早くしてくれ!」

○結婚式場・玄関
   一方的にビームを打ち続けるサダノブ。
   それを避けたり受けたりして防御する
   ツバメ。
   それを見るスハラ。
スハラ「そうは言ってもよぉ……」
通信の声「早く、ツバメ中尉をぐあっ!」
   と、爆発音。
   スハラ、顔色が変わる。
スハラ「……ちゅっ、中尉!もうもたねぇ!
 早く乗ってくれ!」
サダノブ「戻るんだ!タハ家の全てが掛かっ
 ている!」
   と、ビームを打つ。
ツバメ「でも、私がいかなければ!」
サダノブ「君が行かなくても国は滅ばない。
 他に軍人がいるンだ。それは多少死者は増
 えるかもしれないが……所詮他人だよ」
   ツバメ、その言葉に眉をあげる。
   そして剣を下げて
ツバメ「誰が辛い思いをしようとも、自分の
 幸せさえ考えていればそれでいい……それ
 が兄さんの……この家の考えなのね」
   ツバメ、剣をサダノブに向ける。
サダノブ、驚きの表情。
ツバメ「私、この家を出ます」
サダノブ「なんだって?」
ツバメ「今こうしている間にも、誰かが辛い
 思いをしているんです!
サダノブ「行ってどうなる?軍人どもがどう
 にも出来にない相手を君一人でなんとかで
 きるのか?」
ツバメ「……」
   と、厳しい表情。
サダノブ「君には君のできることをやるべき
 だよ。この家を守るほうが、意味もあるし、
 君の為にもなる。無意味な感情に……」
ツバメ「……兄さんは、知らないんです」
サダノブ「お前一人で、何が出来る!」
   スハラ、身を乗り出して見る。背後に
   大きな化け物の影が落ちる。
   轟音とともにツバメの剣から超巨大ビ
   ームが発射される
サダノブ「!」
   そのビームが、サダノブの肩をかすっ
   て、スハラの背後に来ていた化け物を
   打ち抜く。
   断末魔を挙げ墜落していく化け物。
ツバメ「私は戦える……」
   気付いて撃墜する化け物を見るスハラ。
スハラ「おっ俺を……追ってきた一匹か……
 さすが、中尉……すげぇ。一撃だ……」
   呆然と立ち尽くすサダノブ。
サダノブ「ツバメ……」
ツバメ「自分たちが良ければそれでいい。他
 人がどうなろうと対岸の火事。私は、そん
 な考え方、好きじゃない!」
   と、ステルス機へと向う。
   サダノブ、振り返り
サダノブ「他人だぞ!他人の為に何故、家を
 自分の人生を捨てる!無意味だ!やつらは
 何もしてはくれない!結局他人はそういう
 ものなんだ!わからないのか!」
   ツバメ、スハラの横に立つ。
   飛び立つステルス機。
ツバメ「わかってないよ。兄さん。何かして
 くれるからではないんです!!何をするか
 に意味があるのです!私は行く!私の意味
 をまっとうするためにも」
サダノブ「ツバメ!」
   と、ステルス機飛んでいく。

○結婚式場付近・空
   飛んでいるステルス機。その上に乗る
   ツバメとスハラ。
スハラ「いいんですか?中尉……」
ツバメ「敵の増援位置。確認できてんの?」
スハラ「ええっと……」
   と、モニターを確認する。
   ツバメ、振り返り式場を見る。
ツバメ「……」
   と、切ない表情。
   振り払うように前を見る。気合いの入っ
   た表情。
スハラ「ポイントY002ッス!じゃんじゃんい
 ますよ!こりゃ!」
ツバメ「よし!飛ぶよっ!」
   と、ステルス機上空へとジェットを加速
   させ来ていく。



終わり



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