黒い道(シナリオ31)
 課題作品。テーマは不安。
不安というものをじわじわっと出せればなぁと思って描いた作品。自分ではちょっと盛り上がりに欠ける部分があったなぁと反省。しかし、直そうにも直しようがないのでこのまま載せちゃいます。
評価は微妙…。ショートショートとしての作品であり、ドラマ性に欠けるかと。まぁ…不安描写が上手く出来てればそれでいいなぁという作品だったと思います。
□内容:ヒッチハイクしている妊婦の知美。そして一台の車が止まる。そこから恐怖のドライブが始まる。

□人  物

 村田知美(32)保険外交員

 秋山信子(30)地方公務員

〜本編〜

○道路(夜・雨)

   山中の道。

   路肩の木に衝突している車。

   それをよけるように車が一台走り抜け

   ていく。

   親指を立ててヒッチハイクしている村

   田知美(32)そのお腹は大きい。行過

   ぎる車を見つめる。

知美「なによ……」

   と、一台の車がやってくる。

   知美はすぐに親指を立ててヒッチハイ

   クする。

   通り過ぎる車。

   知美、ため息。

   すると、過ぎた車がハザードをたき、

   止まるのが見える。

   知美、それに気がつく。

   走って車まで行く知美。

   大きいお腹が揺れる。それを手で押さ

   えて走る。

   車のウィンドウが下がる。

   運転席にいる秋山信子(30

信子「ちょっと大丈夫?」

   知美、笑顔。

 

○同・車内(夜・雨)

   雨足が強くなっている。

   信子が運転している。後部座席にはタ

   オルで頭を拭いている知美。

知美「本当に助かりました。ありがとうござ

 います」

信子「何ヶ月なの?」

知美「え?あ、ああ……9ヶ月です」

信子「赤ちゃん大丈夫?」

知美「え、ええ。多分大丈夫です」

信子「病院行こうか?」

知美「い、いえっ。本当に大丈夫ですから」

信子「じゃあ、市内まで行けばいいの?なん

 なら自宅まで行ってあげるよ?」

知美「本当に市内までで結構です。ありがと

 うございます」

信子「そう……」

知美「タオルありがとうございました」

信子「そのへんおいて置といて」

   知美、タオルを自分の横に畳んで置く。

   知美、後部座席に身を沈める。

   目を閉じて息をつく。

知美「はぁ……」

   ラジオの音が鳴る。

ラジオ「8時のニュースです」

   知美、目をあけてラジオを見つめる。

ラジオ「では次のニュースです。保険金殺人

 の容疑で……」

信子「最近、物騒ねぇ」

   知美、身を起こして

知美「あ、あのラジオ変えてもいいですか?」

信子「え?あぁ、いいわよ」

   と、ラジオを変える。

   ラジオから音楽が流れてくる。

知美「さ、殺人事件のニュースなんて、胎教

 に悪いと思いません?」

信子「ロックはいいの?」

知美「ええ」

   と、笑う。がすぐに真顔になり座席に

身を沈める。

 

○道路(夜・雨)

知美達が乗る車が山道を走る

 

○同・車内

   知美、後ろに振り向き外を見つめる。

   後ろから車が追い越してくる。

知美「……」

   と、その車を見つめる。

   追い抜いていく車。

信子「あら、30キロオーバー。反則ね。減点6

  30日の免停ね。前歴あればもっとね」

知美「え?」

信子「あぁ、あれよ。これはいいの?10キロ

 オーバーは許容範囲内」

   と、スピードメータを指差して笑う。

知美「……随分詳しいンですね」

信子「えっ?あぁ。いや……常識じゃないか

 しら?このくらい」

知美「……あの……なにをやってらっしゃる

 んですか?」

信子「……運転」

   知美、はぁっ?と。

信子「あははっ、ウソウソ。地方公務員よ」

知美「……地方公務員……」

信子「……しがない役所勤務よ。まぁ、今は

 色々と言われてて肩身が狭いけど」

知美「……」

信子「あなたは?って、そうだ。あたし秋山信子。よろしくね。あなたは?」

知美「あ、ええ。村田知美といいます。あの

 ……保険外交員をしています」

信子「保険のおばちゃんね?所謂」

 

○公衆トイレ(夜・雨)

   広い駐車場。トイレと自販機などが設

   置されている。山道を抜ける車の為に

   用意された軽いパーキングエリアのよ

   うなところ。薄暗い。

   そこに知美達が乗る車が止まる。

 

○同・車内

信子「コーヒーでいい?」

   と、バッグをあさっている。

知美「あ、いやあたしは……」

信子「じゃあ、コーヒーね?」

   と、行ってしまう。

知美「……」

   と、自販機で買い物をしている信子を

   見つめる。

   知美、視線をめぐらし考える。

   そして、ドアを開けて外に出る。

 

○同・トイレ

   薄暗い女子トイレ。

     知美が鏡を見ている。

信子の声「地方公務員よ」

知美「……あの人……まさか……」

   と、じっと鏡を見つめる。

   そしてトイレを出る。

 

○同・トイレ外

   トイレを出て、自販機を見る知美。そ

   こに信子の姿は無い

知美「やっぱり別の車で……」

と、トイレの裏手に小走りで回る。

    と、目の前に信子が立っている。

    驚く知美。

信子「逃がさないわよ」

知美「……あっ……あっ……」

信子「なんてね。戻ったらいないから探しち

 ゃった。車、あっちよ」

   と、笑顔で手に持ったコーヒーを知美

   に渡す。

   知美、驚いたままの表情。

 

○道路(夜・雨)

   知美達が乗る車が走っている。

 

○同・車内

   運転席に信子。後部座席に知美。

     知美、折畳んだタオルを膝の上に置き

     その裾をしきりに指でこねている。

知美「……」

信子「あのさぁ。一つ聞いていい?」

知美「は、はい」

信子「あなた、芸能人に似てるとか言われな

い?」

知美「え?い、いえ……」

信子「そう?でも誰かに似てると思うのよ

ね?どっかでみたことあるもの」

知美「!」

と、顔を伏せる。

信子「誰だったかしら……」

知美「か、勘違いじゃないですか?」

信子「最近見た気がするの……誰だったかし

ら……えーっと」

ラジオ「ニュースの時間です」

知美「!」

と、ラジオを見つめる。

ラジオ「先日の保険金殺人の……」

知美「あの、ラジオを……」

信子「ちょっと待って」

と、手をかざし、知美を遮る。

車が揺れる。

助手席においてあった信子のバック

が倒れる。そこから黒い手帳が見える。

金色の文字で「帳」の字がかろうじて

確認できる。

知美(やっぱり)と、声にならない声。

信子「……そうよ。思い出した」

と、バックミラー越しに知美を見つめ

る。

知美、その視線から目をそらす。

知美「あっあの!すいません!私ここで!」

信子「そうよ。東山順子!そうそう。そっく

りよ!ほら、あの女優の!」

知美「(呆然)え?……」

ラジオ「保険金殺人の容疑で逮捕され、自殺

た沖田卓容疑者は容疑者死亡のまま書類

送検されました。また……」

信子「言われない?」

知美「い、いえ……」

と、座りなおす。

知美「そ、それより消しても」

信子「……じゃあ、これは言われない?」

知美「え?」

信子「保険金殺人の首謀者で実行犯の沖田卓

を放って自分だけは逃げ回っている木下

泰恵って女に似てるって」

知美、その言葉で、ビクリとする。

知美「……!」

   信子、ミラー越しに知美を見ている。

   知美の手が震える。

知美「あ……あ……」

キッと、車が止まる。

    知美、焦ってドアに手を掛けると

ガシャとドアロックが掛かる音。

知美「!」

   と、信子を見ると

信子「(正面を向いたまま、無表情)……」

   知美、息が荒くなる。

知美「警察、なんでしょ……最初から分かっ

てたの?」

信子「卓は……」

   と、ナイフを知美に向ける。

知美「え?」

   信子の形相が一変している。

信子「卓はあんたに騙されたのよ」

知美「え?」

信子「あんたみたいな女が妊婦?はっ!
笑わせてっ」

   と、ナイフを振り下ろす。

知美「!」

   ナイフがお腹に刺さり、中から綿が出

てくる。

知美、体を震わせて息が荒くなる。

そしてドアにくっつくように逃げる。

知美「……け、警察でなんでしょ……?」

信子「あんたに誑かされて卓は人殺して、そ

 の上自殺したんだ。あんただけ逃げるなん

 て許さない」

知美「……あんた、沖田の……」

信子「そうよ。ずっとあんたを探してたの

 よ」

    知美、逃げようとドアに手を掛ける。だが、開かない。

知美「で、でも!警察官なんじゃ!」

信子「あはっ、馬鹿」

   と、知美にナイフを振り下ろす。

終わり



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