キラーワーク(シナリオ9)
 はじめは物凄く暗い話を考えていたのに、いつの間にか「いい話」になった作品。世のお父さんや、そうでない人たちにメッセージをば。
□内容:家族を抱える中で職を失い借金に頭を悩ます主人公レンジ。そんな彼にある仕事が紹介された。本当に、とんでもない仕事が……。


□人  物

 レンジ(35)
 レンジの奥さん
 マブオ(38)
 ミニスカ
 掃除婦(70代)


〜本編〜

○公園(夕暮れ)
  広い公園、ベンチが幾つかある。木には
  クリスマスのイルミネーションなどが付
  いている。
  レンジ(35)スーツ姿で、ベンチに座っ
  て本を読む。――就職情報a〜n。
レンジ「(ため息)ハァ……」
  携帯電話が鳴る。胸ポケットからそれを
  取り出して出る。
取立て屋の声「あっ、広田レンジさんですか?
 こちら丸儲け金融ですが、先月からのご返
 済が滞っておりますが……」
レンジ「はい……はい……すみません……は
 い」
  と、携帯を閉じる。
レンジ「(携帯を見つめて)ハァ〜……」
  と、また携帯が鳴る。レンジ出る。
奥さんの声「……今日は遅いの?出来るだけ
 早く帰ってきてね」
レンジ「……あ、あぁ……」
奥さんの声「……太一も待ってるから。じゃ
 あね」
  と、電話が切れる。レンジ携帯を閉じて
  肩を落とす。
  そこへミニスカがレンジの目の前に現れ
  る。
ミニスカ「お困りのようですね」
レンジ「は?」
ミニスカ「(隣に座って)お仕事紹介しましょ
 うか」
レンジ「……い、いえ」
  と、ベンチを立って去ろうとする。
ミニスカ「普通のお仕事じゃあ、ご返済はで
 きませんよ?」
レンジ「(振り向いて)……」
  ×  ×  ×  ×
  レンジと、ミニスカベンチに座っている。
レンジ「はぁ……インターネットのサイト…
 …」
ミニスカ「そこである賭け事をしている人た
 ちがいまして」
レンジ「賭け事……?なんのですか?」
ミニスカ「(笑顔で)殺し合いです」
レンジ「(驚いて)こ……っ」
ミニスカ「ゲームのプレイヤー、どちらかが
 生き残るのか賭けているんです」
レンジ「え?そういうバーチャルななんか、
 CGキャラクターとかですよね?」
ミニスカ「いいえ、リアルです。本物の人間
 同士」
レンジ「まさか……」
ミニスカ「あなたの仕事は、その人間になる
 ことです」
レンジ「えっ……」
  ミニスカが笑顔でレンジを見る。
  
○駅のホーム(夜)
  人はまばら。電車はまだ来てない。
  レンジ、前に立っているマブオ(38)を
  辛辣な表情で見ている。胸の携帯電話は
  バイブしている。
レンジ「これが鳴ってるってことは……あの
 人が参加者……」
  と、ポケットからバタフライナイフを取
  り出して見つめる。ビビッた表情。
レンジ「ゴクリ……」
  そして、マブオを見る。
レンジ「(小声で)よっ……よし……」
  体が小刻みに震えている。足を前に出そ
  うとするが、怖くて踏み出せない。
マブオ、携帯のメールを見ている。――「ア
 ナタわかってないわ。そういうことじゃな
 いの。だから帰らない」
マブオ、返信のボタンを押して内容を書く―
 ―「もうすぐ金が入るから、大丈夫だから」
  と、胸のポケットで携帯がバイブしてい
  ることに気が付く。驚いてまわりを見渡
  す。
  レンジと目が合うマブオ。
レンジ「(驚いて)――!」
マブオ「(驚き)!」
  レンジ、慌てて目をそらしてそこを去る。
  マブオ、決心した表情でレンジを追う。
  
○トイレ
  ――男子トイレのマーク。
  トイレの個室にいる。
レンジ「(汗を拭いながら)はぁっはぁっ…
 …」
  コツンコツンと足音が聞こえる。
  レンジ、その音に気が付いて顔を上げる。
  マブオ、トイレに入ってきて一つだけ閉
  まっている個室を見る。
  マブオ、ポケットに手を入れてまさぐり
  ながら個室へと近づく。
  レンジ、息を荒くしてポケットからナイ
  フを取り出す。
  
○(イメージ)トイレ
  レンジ、ドアを勢いよく開けて持ってい
  るナイフでマブオの胸を突く。マブオ突
  かれながらもレンジの背中にナイフを突
  き立てる。
  
○トイレ
  ぶんぶんと、個室の中で頭を振るレンジ。
  マブオ、個室のドアの前で必至の形相。
  
○(イメージ)トイレ
  マブオ、ドアを蹴り開けてすぐに横に隠
  れる。叫びながら出てきたレンジのわき
  腹をナイフで突くが、避けられてそのま
  ま壁に激突。
  
○トイレ
  軽く頭を振るマブオ。
  レンジ、頭を抱えて必至に考えている。
  
○(イメージ)トイレ
  マブオがドアを蹴破ってくる。そのタイ
  ミングに合わせて、個室をよじ登って横
  の個室へと行こうとするが足が引っかかっ
  て便器にダイブ。鼻血がブシューっ。
  
○トイレ
  激しく頭を振るレンジ。
  マブオ、一度首を縦に振って決心した表
  情。
  少し、助走をつけてドアを蹴る。
レンジ「!!!」
  マブオ、またドアを蹴る。
  レンジも合わせて内側からドアを蹴る。
  何度も同じタイミングで蹴りあう二人。
レンジ「っうぁあ!」
  と、お互いが蹴ると内側からドア破れて
  マブオが吹き飛ぶ。
マブオ「んぁ!」
  レンジがすかさず出て、ポケットからナ
  イフを取り出そうとする。
  マブオ、すぐに立ち上がって突っ込む。
マブオ「ぬぉお〜!!」
  レンジの手を掴んでレンジをそのまま押
  しやって、ポケットからナイフを取り出
  す。
マブオ「んっ!んっ!」
  と、何度かバタフライナイフを振るが開
  かない――ロックが掛かっている。
レンジ「んぉぉっ!」
  と、押し返すとバランスを崩してマブオ
  に覆いかぶさる。
レンジ「ぬあぁぁああああぁぁ!!」
  と、両手ではたく様にバンバンとマブオ
  を叩く。
マブオ「ああああああああ!!!」
  と、応戦する。
レンジ「俺には女房も子供もいるんですぅぅ!」
マブオ「俺だって逃げた女房がいるんだぁぁ
 ああっ!!」
  むちゃくちゃに叩き合う二人。
  掃除婦のおばちゃん、トイレに入ってく
  る。
おばちゃん「ちょっと!アンタ達!なにやっ
 てるんだい!」
  と、慌てて二人の間に入って止める。
レンジ「はぁっ!はぁっ!」
マブオ「はっ!はっ!」
おばちゃん「まったくいい歳して……アンタ
 ら、女房子供いるんだろう!?殺し合いな
 んてしてないで、早く帰りな!」
レンジと、マブオ「(息を切らせて)……」
  と、おばちゃんを見つめる。
レンジ「でも、殺して金をもらわないと……」
マブオ「お……俺だって」
おばちゃん「金なんていいから、早く帰って
 ケーキの一つでも買って帰んな!」
レンジと、マブオ「(考え込む)……」
  
○トイレ
  個室のドアは壊れていない。なにも起こっ
  ていない状態。
マブオ「(感慨深く)……」
  レンジも個室の中で、感慨深くなって
レンジ「……」
マブオ「……はぁっ(ため息)」
  ポケットから手を出してトイレを去る。
  レンジも個室から出て
レンジ「……」
  と、トイレを出る。
  
○街中(夜)
  クリスマス一色の街。露店のケーキバー
  ゲンをサンタ衣装の人が売っている。
  レンジ、疲れた表情で歩いている。
  ケーキの露店に気がつくレンジ。
レンジ「……」
  おもむろに財布を出して中身を見る。
  レンジ、中身を見つめる。
  ×  ×  ×  ×
サンタ衣装の人「ありがとうございました〜
 メリークリスマス!」
  ケーキを持っているレンジの手。
  レンジ少し足取りも軽く、夜の街に消え
  ていく。
 
 
  終わり


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