雨香の待ち人(シナリオ12)
  雨シリーズの第一弾。自分がとにかく好きな手法で描きました。ミュージッククリップのようなものを感じていただければ。
□内容:雨の日に喫茶店の決まった席で物憂げな女性。男はその女に惹かれ、遠くからスケッチをし始める。ある日、その女と相席になり……。


□人  物

 男(21)大学生。いつもスケッチを片手に持っている。
 女(27)目が切れ長い美しい女性。
 店員


〜本編〜

○駅前・夕暮れ(雨)
  駅の構内にある喫茶店の大きな窓がある。
  窓際の4つ椅子のテーブル席から外を眺
  める女(27)窓の外、サラリーマンなど
  が行き交う。
  
○同内・喫茶店
  テーブルの上に開いた状態で置かれている携
   帯電話。画面は「新着メールなし」
  女は、それを見て軽くため息をつく。
  その横顔を遠くの席から見ている男。
  女の美しい横顔を見ている。
  そして、手元においてあるスケッチに描
  き出す。スケッチには女の横顔が描かれ
  ている。(完成していない)
  男はまた、女を見る。
  女は雨空を物憂げな表情で見つめている。
  男、満足そうに見つめる。
  
○タイトル
  外から見える喫茶店。窓越しに見える女。
  タイトル――「雨香の待ち人」
  
○駅前・夕暮れ(大雨)
  多くのサラリーマンなどが走って家路に
  急ぐ。
  
○同内・喫茶店前
  男が店内を見つめる。
  店内は、混んでいる。
  女が同じ席に座っている。
  男は、軽く顔を緩めて店内へ。
  
○同・店内
店員「申し訳在りません。相席でもよろしい
 でしょうか?」
男「え?ええ……」
  ×  ×  ×  ×
店員「こちらになります」
  と、案内されて男が来る。みると、女が
  座っている。
  女は外の雨空を眺めている。手元には携
  帯電話が開いた状態である。
男「(驚く)……」
店員「(女に)相席、よろしいでしょうか?」
女「(振り返り)……ええ」
  と、少し笑顔で言う。
  店員に促されて席に着く男。女と向かい
  合わせにならないように座る。スケッチ
  を女の向かいの席に置く。
男「(店員に)コ、コーヒーを」
  店員は会釈をして去る。
  女は、携帯のボタンを一回押す。そして
  画面を見つめる。
  男は、その顔をチラチラ見る。
  女のその目。女の唇。女のうなじ……。
男「(見とれる)……」
  女は軽くため息をついて顔を上げる。
  男と目が合う。
  すぐに視線を下にする男。
  店員がくる。
店員「失礼します」
  コーヒーを男の前に置く。
  店員が去る。
  男は、コーヒーを口に持っていく。
女「いつも、何を描かれているんですか?」
  男は噴出しそうになる。
男「え……?」
女「いつも、ここにいません?」
男「え……ええ」
女「何を描いているのかなぁと思って」
男「べ、別に……」
女「……そうですか」
男「……」
  女、また外を見る。
  男、戸惑いながらコーヒーを飲む。
男「……」
  ぐいっと、コーヒーを飲み干して、急い
  で、カバンを持つ。
男「ど、どうも」
  と、会釈してレジに向かう。
  女は不思議そうに男の背中を見る。
  焦った様子で店を出る男。
女「……」
  と、男のスケッチが椅子に残っているこ
  とに気が付く。
女「あ……」
  
○駅前・昼(晴れ)
  若者などが多く行き交う。
  
○同内・喫茶店
  店内には主婦などが多くいる。
店員「申し訳在りません。そういった忘れ物
 はお預かりしておりません」
男「そ、そうですか……」
  店を出ようとする男。
  振り返って、女のいた席を見る。女はい
  ない。
男「まずいなぁ……」
  
○駅前・夕暮れ(雨)
  サラリーマンなどが多く行き交う。
  
○同内・喫茶店前
  男が喫茶店の前に来る。
  恐る恐る店内を見る。女が同じ席で、手
  元に開いた携帯をおいて雨空を見ている。
  さらに、手元に男のスケッチが置いてあ
  る。
男「(呟く)うあ……」
  女、スケッチに目をやる。
  男、少し考えてからその場を去る。
  女、顔を上げて男を捜す。丁度男は去っ
  たあと。
  女、軽くため息をつく。
  手元の開いた携帯の画面には「新着メールなし」
  
○駅前・夕暮れ(小雨)
  サラリーマンなどが行き交う。
  
○同内・喫茶店前
  男が店内を覗いている。
  女は同じ席にいる。手元に開いた携帯と
  スケッチ。
  男、頭をかく。
  ガチャンと音がする。
  店員がお盆からコップを落とした。
  女がその音に振り向くと、外にいた男と
  目が合う。
  女は、気付いた表情。
男「あ……」
  女はスケッチを持って立ち上がる。
男「(緊張してそれを見る)……」
  女、髪を耳にかけてスケッチを持って歩
  いてくる。
男「(緊張)…………」
  と、男は早足で駅を出て行く。
女「あっ……」
  と、女は追いかけて店を出る。
  
○駅前・夕暮れ(小雨)
  女は駅の出口から男を捜して見渡す。
  傘を差している人が多く、男を見失う。
女「……」
  そして、スケッチを見つめる。
  
○同内・喫茶店
  女の座っていたテーブルの上で携帯が震
  える。
  画面には「新着メール1件」
  
○駅前・夕暮れ(雨)
  サラリーマンが行き交う。
  
○同内・喫茶店前
  男が、恐る恐る店内を見る。
  女の姿はない。
男「……」
  そして、店に入る。
  
○喫茶店内
  男は、女の席が見える席に同じように座
  る。
男「(店員に)コーヒーを」
店員「あっ……お客様」
男「はい?」
店員「以前、お伺いしましたお忘れ物が」
男「え?」
  と、店員はレジに行く。
男「(それを見る)……」
  店員、スケッチを持って戻ってくる。
店員「こちらでしょうか?」
男「(スケッチを見て)え……ええ」
  と、受け取る。
男「どうして……?」
店員「女性のお客様が届けて下さいました」
男「……」
  そして、女のいた席を見る。
男「……」
  
○駅前・夕暮れ(雨)
  半そでを着たサラリーマンなどが多く行
  き交う。
  
○同内・喫茶店
  男が、同じ席に座っている。
  女のいた席を見ている。
  ――女の姿は無い。
男「……」
  スケッチを開いく
  ――描きかけの女の横顔……。
  男は鉛筆を取リ出して、スケッチに描き
  こむ。
  顔をあげてスケッチを離して見る。
  絵の左端に「題・雨香(あまか)の待ち
  人」
  そして、その横に自分のサインを描き、
  スケッチを閉じる。


終わり


BBS

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