雨上がりは虹模様(シナリオ13)
 雨シリーズ、第二弾。ちょっと不思議で優しいお話を目指して描きました。僕はどうにも「雨」が好きでたまらないらしいです。題名が気に入ってます。
□内容:とある孤児院に、とんがり帽子の女の子がやってくる。孤独だった彼女は、孤児院の人々の優しさに触れ、子供の願いを形にする。



□人  物

 ソーア(13)女の子・とんがり帽子に深紫のワンピースという魔女の格好
 マチュ(8)男の子
 グランマ(38)女性・恰幅が少しいい
 その他子供・女性


〜本編〜

○村(雨)
  林の中にある村。柵で囲まれている。
  その村から出てくるソーア(とんがり帽
  を被っている)
  悲しげに振り返り、そこを離れていく。

○タイトル
「雨上がりは虹模様」

○孤児院(雨)
  木造の大きな家。窓が多めで長い縁側が
  ある。前には大きな広場。
  マチュが縁側に座って、外を見ている。
  と、気がつくマチュ。
  ソーア、フラフラと前の通りを歩く。
  ソーア、壁にもたれ落ちる様に倒れこむ。
  マチュ、驚いて家の中に入っていく。
  
○孤児院・朝(雨)
  孤児院が見える。
  
○同・食堂
  広いダイニングキッチン。大きな食卓。
グランマ「ちゃんと座る!朝ご飯抜きよ〜」
  と、テーブルにスープを置く。
  子供達が騒ぎながら、元気よく席に着く。
  ソーア、ドアをあけて入ってくる。(帽子は
  被っていない)
グランマ「どうだい?調子は?」
ソーア「(周りを見て)……」
グランマ「大丈夫。ここは安全なところだから。少しやかましいけど
 ね。さ、座って」
  と、空いている席を一つ引く。
  ソーア、軽く頭を下げて席に着く。
グランマ「名前は?」
ソーア「(呟く)ソーアです」
グランマ「いい響きだね。あたしのことはグランマって呼んでかま
 わないよ」
ソーア「……ありがとうございます」
グランマ「お礼ならマチュに言って、あの子があなたを見つけてく
 れたんだよ」
  マチュが、恥ずかしそうに見ている。
ソーア「(マチュに)……ありがとう」
  マチュ、恥ずかしそうに笑う。
グランマ「それから、明日から寝坊しちゃだめよ」
ソーア「……いえ、帰ります……」
グランマ「どこに?」
ソーア「……」
グランマ「(笑顔で)寝坊はダメよ」
  と、言ってスープをソーアの前に置く。
  子供たちがワイワイ騒いでいる。
  
○ 暖炉のある部屋
  椅子に座って本を読んでいるグランマ。
  それを囲むように子供達がいる。
グランマ「魔女はそういうと、魔方陣を描いて魔法を唱えました」
子供「グランマ。魔女って本当にいるの?」
グランマ「いるよぉ。山の深いところに魔女の里っていうのがあっ
 てね。そこには沢山の魔女がいるんだよ」
子供「僕知ってる!魔法が使えない魔女は、追い出されたりするん
 だよ!」
ソーア「(俯く)……」
  グランマ、ソーアを見つめる。
グランマ「さっ、続きだよっ」
  と、また本を読み始める。
  マチュ、そのソーアの横顔を見つめる。
    
○縁側(雨)
  マチュが縁側に座り一人、外を見ている。
  ソーア、やってくる。
ソーア「ご飯だよ」
マチュ「(外を見ながら)……うん」
ソーア「……いつも、ここにいるから、私を見つけたのね」
マチュ「うん」
ソーア「何をしているの?」
マチュ「……お母さんを待ってるの」
ソーア「……」
  と、縁側に腰を掛ける。
マチュ「必ず迎えに来るって言ったんだ。だから、いつ来ても
 すぐにわかるようにここで待ってるんだ」
ソーア「……そう」
マチュ「早く、迎えに来てくれないかなぁ。また虹の絵本を読
 んでほしいな……」
ソーア「……」
マチュ「ねぇソーアは知ってる?虹のお話」
ソーア「(首を振って)なに?」
マチュ「虹は神様の贈り物なんだ。虹を見ると願いが叶うん
 だって」
ソーア「……」
マチュ「だから、虹が出たら、神様にお願いするんだ。お母さ
 んが早く迎えに来てくれるように。でも……(空を見る)
 ソーアも空を見る。
 ――雨はシンシンと降っている。

○孤児院・朝(雨)
  孤児院が見える。
  
○マチュの部屋・雨(夜)
  子供達が3人ほど寝ている。マチュが窓
  際のベットに寝ている。
  マチュが声に気がついて、窓の外を見る。
  と、ソーア(帽子を被っている)が広場
  に指で魔方陣を描いている。
  泥で汚れた指先。
  そして、離れては何かを言っている。
  そして、また魔方陣を手で、消して描き
  直している。
マチュ「……」

  ソーア、ドサリと倒れる。
マチュ「あっ……!」

  ×  ×  ×  ×  ×

○グランマの部屋(大雨)
  ベットで寝ているソーア。床には一枚布
  団がしいてある。
  ソーア、目を覚ます。
グランマ「(気付いて)まだ、寝てなさい」
ソーア「(周りを見て)……」
グランマ「あるよ」
  手に持っている帽子をソーアに渡す。
  ソーア、それを受け取る。
グランマ「……ゆっくり寝ていなさい」
ソーア「でも……でも……」
グランマ「いいのよ……」
ソーア「魔法……」
グランマ「……」
ソーア「魔法使いなんです……」
グランマ「……里を追い出されたのね」
ソーア「(驚いてグランマを見る)!」
グランマ「(笑って)なんとなく分かってた。。。
 でも、魔法が使えなくたっていいのよ。ここは誰もあなたを追
 い出す人はいない」
  ソーア、首を振る。
ソーア「虹……虹を出したい。出してあげたい。私、なんにもで
 きない。優しくしてくれたみんなの為に、なにかしたい……」
  と、顔を帽子に埋める。
グランマ「いいんだよ……いいんだよ」
  と、ソーアの頭を撫でる。
  ガチャっと音がしてマチュが入ってくる。
グランマ「どうしたの?マチュ」
マチュ「僕もここで寝る」
グランマ「……いいわ。そこで寝なさい」
  マチュは横に敷いてある布団に潜り込む。
グランマ「あなたが大好きなのね……」
  ソーア、帽子に顔を埋めたまま、泣く。
  その涙がソーアの帽子に触れる。

○孤児院・夜(大雨)
  外の雨がやんでくる。
  外に書いてあった魔方陣が一瞬光る。

○同・グランマの部屋
  ソーアが寝ているベットに、頭を乗せて
  寝入っているグランマ。
  グランマ、目を覚ます。ふと、窓を見る。
  ――驚いた表情。
グランマ「ちょっと、みんな、起きてっ」
  ソーアが起きる。
グランマ「ソーア!窓の外を見てっ」
  ソーア、眠い目で窓の外を見る。
  驚いた表情。
グランマ「ほら!起きて!」
  マチュが起きる。
マチュ「(眠そうに)どうしたの?」
グランマ「窓を見てごらん!」
  と、マチュが窓に近づいて見る。
マチュ「わぁっ!」
  ソーア、窓を開けて、身を乗り出す!
  ――満点の星空。
  ――大きな満月。
  ――大きな虹。

  満点の星空と大きな満月に虹が幻想的に掛かっている。
マチュ「すごい!夜の虹だぁ!」
ソーア「(見とれている)……」
  幻想的な夜の虹が見える。
マチュ「お母さんが早く迎えにきてくれます
 ように!」
  ソーア、そんなマチュを笑顔で見つめる。
  窓越しに虹を見ている三人。

○孤児院外・夜(晴れ)
  孤児院を中心に、星空と月虹が浮かぶ。

○孤児院前・朝(晴れ)
  ソーアが、門から出てくる。
  振り向いて、孤児院を見ている。少し悲
  しそうな表情。
  そして、ゆっくりと通りを歩き出す。
  その横を、女性(35)が通り過ぎる。
  ソーア、女性を見る。
  ――手には絵本表紙には虹の絵。
  そして、孤児院に入っていく。
ソーア「……(笑顔)」
  そして、遠くに歩いていく……。


終わり


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