「自分コントローラー」

トイレ掃除をしていると、ゴボゴボとコミカルな音が鳴り響き、私はなにかと思いそこをみた。
コントローラーが、プカーリ浮いていた。
私は汚いなぁと思いながらも、それをゴム手袋をして取り上げてなんのコントローラーなのか見つめてみた。

ゲームだ。ゲームのコントローラーだ。

人気家庭用ゲーム機のコントローラーが何故トイレから出てきたのか?
よくわからないが、汚いのですぐにスーパーの袋に詰めて、燃えないゴミとして明日すてることに決定した。

ゴミを捨てに行くと、近所の主婦が子供を連れてやってきた。私はこういう近所の挨拶的な社交辞令を得意としないので、その場をさっさと移動した。

すると、遠くで子供がゲームのコントローラーだとアホみたいに私のゴミ袋を見て騒いでいる。
母親は、無視して缶ゴミとビンを分けて捨てている。

そんな様子を少し見ながら歩き出そうとすると、私の体はあらぬ方向へと動き出した。
脳内では真っ直ぐ行くんだと命令を出しても、その命令を「あ、そう」とばかりに右へ左へ。
私の体はまるで操られているように動き出してしまった。

「あぁ、昨日遅くまでスケベビデオの自発的批評をしていたからな」などと脈絡も無い理由を頭に浮かべ、すぐにゴミ捨て場にいる主婦と子供を見た。あぁ、完全に頭のおかしい人に思われてるな。もしくわキチガイと思われてるな。まぁ、でもなんでこんななってるのかわからないんだけどね
と、冷静に考えつつも体はぐっしょりと汗で重くなり耳に血液が収束して加速していくのがわかった。
もし、漫画だったら煙が両耳から同時に噴出して目はあっちゃこっちゃ向いてる感じに違いない。気は違っているが。

と、主婦は私のチクタクバンバン行動にまったく気付かず、子供は私の捨てたコントローラーのスティックを袋越しにグリグリまわしているだけだった。
よかった。まだバレてない。と安心して落ち着くも体は一切落ち着く様子はなく、さらにクルクルと周りを歩き回る。
私はあまりのスピードに「わぁ!」と声が出そうになったが、これで「わぁ!」だの「ふぅー!」だの言ったら、完全に頭のおかしい人か、ストリート大道芸人と思われ、あの主婦とは決して不倫関係には陥ることはないと思い、その声を必至にのどで押しつぶした。

しかし、押しつぶすと逆に声を出すための空気だけが突き抜けて、丁度おケツに圧縮された大腸内空気のように「くしゅー・・・」とスカしたやつが変わりにこんにちわしてくる。
私は壊れた機関車のように「くしゅー・・・」「くしゅー・・・」と煙は無い感じの汽笛を鳴らしながら、周りをぐるぐると歩き回り、さらに首から上を真っ赤に染めて
恥ずかしさと息ぐるさと心強さをドッキングさせ、このままビームが出るんじゃないかと思うほど目に血管の茎が黒目に到達寸前になっていた。まぁ到達はしてたと思う。

そして、そんなレベル上げ中の勇者的な私の行動に気付いた主婦。
こちらを見て顔をゆがませている。しかし、私にはその表情が幾つにも並んで見えている。
高速で回っているので主婦の怪訝でゆがんだ顔が忍者分身殺法のように連続し、さらにアニメの元となった映写機を見ているように子供の手をとり小走りに消えていくのがわかった。
と、主婦とその子供が去ると同時に私の回転分離機状態は惰性となって開放されていく。
どうやら、症状がおさまったようだ。

私はクールダウンをする選手のようにゆっくりと惰性に身を任せてその動きを止めていく。
今までのどでつぶしていた息を一気に吐き出して通常の継続した呼吸行動を短い波長で再開した。
「一体、なんだったのだ・・・」
と、ロボット物のナレーターのようなことを口走り、まわり確認した。
それまで混ざり合っていた風景も舞台背景のように整然としスズメが鳴きながら電線に戻ってくる。
私は涙を拭いて家路に戻ることにした。
疑問が頭を2回転3回転する。病院はどこに行ったらいいのだろうか?症状を聞かれてたらどう説明すればいいのだろう?と、いうよりもう手遅れなのでは・・・?と。
そして玄関までくると私は一つあの回転行動とリンクしている現象に気がついた。

主婦の缶ゴミだ。

主婦が缶ゴミを捨て出したとき、私の体はチキチキバンバン猛レースをはじめたのだから、きっとあの主婦の缶ゴミがなんらかの作用を引き起こして私に数学的理論を屈がした行動を発動させたに違いない、と。
そして私は、缶ゴミ捨て場に直行した。
なぜか、一度回っていた場所で自主的に1回回ってからそこへいった。特に意味はないが、きっと楽しかったのだろうね。

缶ゴミを調べるが一切妖しいところがない、あるとすれば適当につぶしてあるだけでちゃんとつぶしてない缶が多く見られるところだ。
ちゃんとつぶさないとかさばるだろーが!などとエコエコする感情をリサイクルするように私は冷静になった。
そうだ。缶は違う!他のゴミなのではないか!と。

そして主婦の捨てたゴミをあけて調べるとあの主婦からは想像もつかない派手な下着が入っているではないか!!ないか!!デーハー下着でポイントアップ!入っているこの瞬間を見逃すなよ!サラエボ!

とりあえず、ジャージのポケットにそれを押し込んで、私は自分の顔を何度も何度も拳で殴ってそれを袋に戻した。
とりあえず、他のゴミ袋も調べてみたがいまいちクルような下着は見当たらなかった。
今、思ったのだが下着をあさる行動の記憶があまりないのに異様に体がズシリと重いのはなぜかと不思議に思った。もしかしたらまださっきの発作なのかもしれない!たぶん違う。

と、自分の捨てたゴミ袋に目が行った。
「あ、このゴミ袋に下着をつめて持ち帰ればかなり自然な感じがしないでもないかな?」と思ったからだ。
そのおかげで私はあのコントローラーの存在に気がつくことができた。
そうだ、あの子供がスティックをグリグリしてたな・・・と。
それに良く考えればこのコントローラーの登場は無理があった。トイレにうっかりコントローラーを流すか、それとも少し頭のおかしい作家が登場シーンに困って書いたかその二つしかないような状況だったからだ。
たぶん、後者であろうね。私はおもむろにそのコントローラーを取り出した。

そしてしばらくそのコントローラーを見つめてやっぱりAボタンから押してみた。
すると私の視界は垂直に上がっていった。
おお、チェホンマンってこんな感じで風景が見えるのか!という感じに。
そして下を見ると私の体が首のないデュラハンのようになって下でコントローラーを握っている。
私は驚いてとっさにBボタンを押した。
すると、私の視界は元の170センチの中肉中背のものに垂直に落ちて戻った。

私はこう見えてもなかなかのゲーマーでバイオハザードは1時間半でクリアーするほどの腕前だ。だからやばいときはとっさにBボタンでキャンセルできる能力に見舞われている。
親に感謝するべき特質能力だ。だからデリヘルだってキャンセル&チェンジザワールドしまくりで大体妥協できるレベルでプレイインザワールドステファンレコできるのだよ。諸君。

このコントローラーは!私を操作できるというものだったのだ!

スティックを倒すと前に移動。もっと大きく倒すと走り出す。Aボタンで首が取れて逆のスティックでそれを動かせる。そしてBボタンでキャンセル。
Yボタンを押すと!まぁ、待て。Aボタンで首がとれるのだからYボタンは一体どんな機能なのか想像がつかない。焦りは禁物だ。よく父親が言っていた「あわてるコジキはもらいが少ない」と。ロクな親ではない。
子供の教育にいたって放送禁止用語を多用してそれにあたるという方針はやはり頭のおかしい子供しか生まれてこないのはもはや周知の事実だ。まぁ、嫌いではないが。
私は一端家に帰ってからコントローラーの性能とやらを見せてもらおうではないか!と思った。

私は小汚い6畳間のアパートに戻ってくると、汚いとは何事だ!憤慨だ!などと思いながらコントローラーをおもむろにジャージから取り出した。
早速、性能を試そうと思ったが、コントローラーを見ていたら、昨日のスパロボの続きが気になったのでとりあえず1面クリアーして、タバコをふかし、もう1面だけと結局4面クリアーして、とりあえずトイレと思い、トイレであのコントローラーのことを考えてコンビニに弁当を買いに行き、かわいいグラビアアイドルの載っている漫画雑誌と一緒に納豆巻きを買って帰ってきた。

我ながら、シティウィズばりの休日の過ごし方に素晴らしさと憤りを感じつつ、納豆巻きの海苔を取り出して見事に失敗して切れた海苔を素の納豆巻きに塗装するようにペタペタと貼り付けていた。
そして、海苔の張り付いた一種の作品と化した納豆巻きを噛み入れ、噛んだ拍子にケツの方から納豆が飛び出るねと感慨深く食べ、例のコントローラーを見た。
とりあえず、白いなと思った。
しかし、このコントローラー一体なんの為に私のところにやってきたのか?さっきゴミ捨て場で適当に触ってみたところ、別段他人を動かすことができるようではなさそうだった。
普通、コントローラーなんだから、自分以外の人間を動かせるものなんじゃないのか?そしたら同僚の若菜さんを操縦して私にピンクのアルバトロス殺法をしてもらいたいと思うのになどと考え、最終的にとりあえず白いとは思った。
私は、納豆巻きの包装紙だけを食べ残して、早速コントローラーを触ってみた。

おかしい・・・さっきは感じなかった違和感がある!手に張り付くような感覚と、味わったことがあるような嫌悪感。私はその時、ピンと来た。納豆が手についているではないか!と。
あれだけ、ケツから納豆が出ることを先読みして食べたにもかかわらずなぜ納豆がついたのか。謎は謎を呼びそうだったが、たぶん海苔を貼り付けていた時についたんだろ。

とりえず、手を洗ってさっぱりとした。ついでに目くそがひどくついていたので顔も久々に洗ってみた。
気付かなかったが、そうとう目が重苦しくなっていたようで、顔を洗うと深夜、おもむろにテレビをつけたらタモリ倶楽部やってんじゃん!みたいに目が覚めた。
その調子に勢いをつけて私は、洋服に身を通した。体温がまだいきわたってない服の温度が私の脳内の活性酸素を刺激するように私の心を行動的にさせた。
そうだ。思い切ってみよう!
私はそう思って、同僚の若菜さんに思いっきりメールを打ってみた。
内容はこうだ
「今日、暇でしたら一緒に映画を見に行きませんか?丁度二枚チケットが手に入ったので」と、今までにないようなデートの誘いメールを打って、とりあえず送信はしないで保存しといた。
まだ8時だから起きてないし、もし起こしちゃったら俺、嫌われるかもしんないし、それに俺なんかからのメールはウザイかもしれないし、つーか昨晩は花の金曜日だから彼氏とホテルに泊まっててそれで寝てるかもしれないし、でも俺のメール見てOKって返事くれても昨日他の男とやったばかりの女と映画見ても昨晩の様子ばかり想像して集中できないし、それに今晩ヤるとなると昨日一発分は消耗している女とヤることになるから、昨日の男と比較検討されるし、もしかしたら検討もされないで終わっちゃうかもしれないし、でもそういうネガティブな考え方はよくないよな!うん!よし、また気が乗ったらすぐにこの保存メールを送信するってカタチで保留にしておこう!と思った。

勢いも落ち着いてとりあえず買ってきたコーヒー牛乳を飲みながらワイドショーを見るべくテレビをつけた。
中学生が先生を刺す。重症とのニュースを見て、世の中の子供は狂ってるなぁなどと、玉金を掻きながらコーヒー牛乳片手に寝っころがってひじを突いて見ていると、あのコントローラーが目に付いた。
あぁ、そういや・・・。と思いコントローラーを見つめた。
やっぱり白いと思った。綺麗なパールホワイトの輝き。セレブ色強い素敵な輝き。今にも黒くなりそうにないそのハイグレードかつ洗練されたボディは見る人間を虜にするまさに魔性の景観だった。

やっぱり、こういうことは調べてからでないと痛い目にあうと思い私はおもむろにパソコンの電源をつけた。もしかしたらネットで同じ状況になった人がブログとかミクシィで書いているかもしれない。でもミクシィは誰も紹介してくれる人がいないので見れない。でも調べてみることが重要だと思い、ウィンドズを立ち上げる。

立ち上がるまでの時間が勿体無いので、買ってきたグラビアアイドルのグラビを肉眼で確認していると、以外にムネが大きくエロいと感じた。いままで見たことのない新人アイドルだったので、私の期待はいいほうに大きく裏切られ、そのグラビを見た私の視神経と股間神経はバイパス工事され、一直線繋がっていくのがムクムクとわかった。

気がつくとパソコンは立ち上がっており、ディクトップの美少女壁紙が私に微笑みかけていた。
いつも思うのだが、この壁紙を見つけられた私はホントにすごいなぁと思う。

タバコに火をつけながらネットを立ち上げる。
早速、検索画面が現れたので私は、雑誌を手に取りグラビアの女の子の名前を打ち込んだ。
ワラワラと検索結果が出てきたので、めんどくさいのでイメージ表示して写真を確認した。
この子のアイドルDVD「もぎたて」が2980円で販売されている。しかも5時間以内に注文すれば今日中に届くと言うのだ!私は信じられないことに購入のボタンを押し込んでいた。
そして、画面に私の個人情報入力が面が出てきた。私は名前、住所、電話番号と入力していく、しかし携帯の番号がいまいち思い出せないのでめんどいからウィンドウを閉じて我に返った。

一体、私はなにをやっているのだ!

こんな衝動的に新人アイドルのDVDを購入してみて、もしただ浜辺で寝っころがって、妙な本人ナレーションが入って見つめられているだけのものだったらどうするのだ!と。

私はもう少し、彼女のDVDの内容を確認するべく、またネットを立ち上げて検索し、DVDレビューを閲覧した。
縄跳びを飛ぶシーンが入っているようなので、私はやっぱり購入を決意し、携帯の番号を調べるべく携帯をカバンから取り出した。
その際に、白いコントローラーが邪魔だったのでベットに投げて、私は番号を入力し、決定ボタンを押していた。
これで、今日の午後には新人グラビアアイドルの「もぎたて」という魅惑のDVDがその戸をあけて入ってくる。
私は、満足し少し疲れ、飲みかけのコーヒー牛乳を捨てるようにのどに流して息をついた。
タバコをたしなみながら、購入したDVDのパッケージを眺める。拡大表示などをして、何度か頷いてウィンドウを閉じた。
さてと、TUTAYAにでもいってなにか借りてくるか。と一番好きなフレーズを心に抱き、私は寝癖を隠すために数年前に買ったお洒落帽子を被って外へと繰り出した。

       ×××

子汚い自分の部屋に戻ってくると私は愕然とした。あのTUTAYAは何もわかっていない。どうして私の好きなアニメDVDを一本しか置かないのか。これではこの界隈にすむアニメ好きが一本借りたら私が借りることができないではないか。そのくせ、どうでもいい海外ドラマばかり本数そろえやがって、ボケ。
と私は憤慨と憤りとそのほかなんかそんなんを肺の中心に血走らせ借りてきた別のアニメを見るべくプレステの電源を入れた。

すると、さっきやっていたスパロボの画面が出たので、しかたないやつだと思いながら一面だけクリアしてやった。
私のことが大好きでしかたないメイドがかまってと呼ぶような感覚にとらわれながら、そんなスパロボが私は大好きだった。
しかし、悲しいことに私は借りてきたアニメを当日中に返さなければならないという使命があったのだ。
私の服を掴んで首を振るスパロボを背に私はアニメDVDとスパロボを取り替えて蓋を閉める。
そして取り出したスパロボの箱が見当たらないので読み取り面を上にしてそのへんに置いた。

さて、早速アニメのチャプター画面がモニターに映される。
5.1チャンネルの設定などが出来るのが最近のDVDの特徴だ。私は5.1チャンネルの設定にすべくコントローラーに手をやった。
もちろん私のテレビに5.1チャンネルのシステムなどはついていないが、なんとなくそれっぽい音がするので設定はしておくのだ。

そして、決定ボタンを押すと、驚くことに私の首はスポンと外れて天井近くへと飛んだのだ。
思い出した。そうえば変なコントローラー手に入れたんだった。
どうやら、そっちのコントローラーを手にとってしまったらしい。
私はそのまま右スティックを動かして部屋中をクルクルと回ってみた。
部屋の電灯を鼻で押して電気をつけてみたりした。
おおーっ、楽。と思ったが別段そのほかに便利な利用方法が見つからなかったので、テレビの前にあるコタツに頭を乗せて本編を見ることにした。

滑らかな動き、綺麗な映像。そして5.1チャンネル独特の立体音に私の心はラッパーのように弾み、そして魅了されていった。
一時間半の夢の時間を過ごした私は、満足感と心地よい疲労感の中で目を閉じて余韻に浸り、それでいてあんな女の子と付き合いたい、そして色んなことをしてみたい。でも、立体化すると目が大きすぎて気持ち悪いので、できればアニメと付き合いたいなどと、普通の人ならば誰でも思うような妄想に包まれていた。

そして、目を開くと私は驚愕した。私の部屋のベットに白いコントローラーを握ったデュラハンがベットにあぐらをかいて座っているではないか!修行僧のようだよ。
私はその状況の驚いたが、すぐに原因を思い出して安心した。そしてちょっとでも刺激のないこの生活に驚きという上昇した精神状態になれたことを得と思い、そんな前向きな自分が好きになった。

私は鼻でその状況を笑い、首を戻した。
とりあえず、コントローラーの研究でもするかとコントローラーを見ると、私はまた驚愕した。

腕がない!

さっきまでコントローラーを持っていた私の黄金の両腕がないのだ!それだけではない!足すらもそこには無く、あぐらどころかお尻しかないではないか!そう!首を後ろ前逆に戻してしまったのだ。
とりあえず、スティック操作で頭を挿げ戻して、自分の手足に感謝した。

私は、色々と刺激的な出来事が起こり、興奮気味の胸をなでおろすためタバコに火をつけた。そして、空気を入れかえる為、窓を開けた。
良質アニメを見れた満足感と、この不思議なコントローラーを手に出来た喜びとで私の機嫌は上昇し、思わず大好きな歌を小さく呟いてしまう。

そして、その歌の高いキーに差し掛かって、私は裏声でそれを表現した。しかし、昔友人に裏声が気持ち悪いと言われたことを思い出し、過去の記憶が今の心に差し掛かって摩擦を起こしかけ、気分を害しそうになったので、私は思い切り大きい声でその高いキーをのどを絞めて歌った。

その気持ちよさに楽しくなって、私は携帯に入れておいたその曲の着メロを再生し、さらにその音に乗せて声を震わせる。ミラクルとも呼べるべきビブラートと行き通る声に自分自身でも驚き、笑顔で歌いながら
「なぜ、カラオケではこれがでないのかなぁ。俺、すげーよ」と首をかしげながら歌い終えた。ちょいとした3大テノール張りに歌い上げて私はふと、肌寒い風が体に当たることに気がついた。
その風の先を見ると私は驚愕した。

窓が開いてるではないか!

私は急いで窓をしめて鍵をかけた。さらにカーテンを閉めて、ご近所リサイタルを終了した。
たぶん、相当声が漏れてご近所に伝わったに違いない。ただでさえ、朝近所の主婦とその子供に奇声をあげながらクルクル回る暴走特急として見られているのにも係わらず、部屋から盛大かつ聡明なテノールが響き渡ればそれこそ、お縄ものである。


第一部 完
第二部 弱肉強食的な現代恋愛事情に対する独身男性のボヤキ
お楽しみに。

一つ前に戻って、今後のことを考える。



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